よしながふみと「やおい」な関係性

「メロディ」4月号のよしながふみ羽海野チカ対談がおもしろい。

見た目仲良くないんだけど、お互いの力を認め合ってて、それでその人が本当に困った時には手を貸してやる関係みたいなものを、やおいだと私らは呼んでいて、


 と、よしながふみが言っているのを読んで、目からウロコが落ちた。

「友情」や「愛情」という言葉では名指すことのできない関係性があって、それを「愛だろこれは!」と読み替えるのが「やおい」、そう自分などは思ってきたのだけれど、その読み替えの前提となる関係性(元ネタ)そのものに遡って、その名づけがたさ故に、「やおい」という名が与えられる、という興味深い事態。

 で、さらに興味深いのが、「やおい」的な関係性の実例として、「TricK」の仲間由紀恵阿部寛が挙げられていること。つまり、男女でも「やおい」でありうる、とよしながふみは言う(もちろん、女性どうしでも)。

 なるほど。

 えーと、この理解で合っているのかわからないけれど、つまり、こういうことかな? 

 世の中には「友情」とか「愛情」といった言葉では表しきれない関係性がある。表面的には仲良く見えないのに、その実、固い絆で結ばれた関係である。

 たとえば『ONE PIECE』のゾロとサンジは、しょっちゅう喧嘩してばかりいる。しかし、その実、非常に固い信頼を抱き合っている。それは甘ったるい「友情」なんて言葉では表しきれない、絶対的な関係性だ。

ONE PIECE  1 (ジャンプコミックス)

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 『SLAM DUNK』の湘北バスケ部もそうだ。「オレたちゃ別に仲良しじゃねえし、お前らには腹が立ってばかりだ。だが……このチームは最高だ」。

SLAM DUNK 完全版 1 (ジャンプコミックス デラックス)

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 こういう関係性はただの友情とも、愛情とも、仲間意識とも呼べない。まだ名前がない、辞書にも載っていない関係性なのである。

 名無しの関係性だから何とも呼びようがないのだが、とりあえず、よしながさんの周囲ではそれを「やおい」と呼んでいる、と。

 で、同性愛ファンタジーとしての「やおい」は、その「やおい」関係を、「それは愛である」と読み替えることによって成立している、と。こういうことだと思うのだけれど、どうだろう。

 ただ、上記リンク先では「つまり、男女でも「やおい」でありうる、とよしながふみは言う(もちろん、女性どうしでも)」と書いてあるけれど、じっさいに女性同士の「やおい」関係を描いた作品ってあるのかな?

 ああ、そうか、桜庭一樹との対談のとき、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は「やおい」である、と言っていたのはこのことか! この理屈で言うならたしかに『砂糖菓子』の二人は「やおい」ということになる。あの二人、全然仲良くないもんね。なるほどなあ。

新世紀エンタメ白書 2007 (毎日ムック)

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

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 あの対談を読んだときはぴんと来なかったのだけれど、ようやく少し理解できた。

 ただ、同性愛ファンタジーとしての「やおい」の根底にある関係性を、やはり「やおい」と呼ぶのは、いかにも紛らわしい。何かべつのネーミングが必要なのではないだろうか。

 こうやって書いていてもちょっと気を抜くとわからなくなりそうだもんね。