『SWAN SONG』プレイ日記 その4

SWAN SONG

SWAN SONG

 なんで、こんなふうになっちゃったんだろう。いやだな。なんで、みんな苦しまなくちゃいけないんだろう。
 だって、誰だって本当は楽しく幸せに過ごしたいはずなのに。それなら、みんなが喜びの歌をうたって、笑いながら抱き合えば、もうそれだけで全部が解決すると思うんだけど、どうして出来ないんだろう。世の中は不思議で一杯だよ。

 ようやく終盤までたどり着いた。

 たぶんあとはクライマックスをのこすのみ。で、この時点で既にぼく的に神エロゲ認定決定済み(以下の4作品+『月姫』につづく第6弾)。

アトラク=ナクア 廉価版

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Sense Off

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らくえん ~あいかわらずなぼく。の場合~

らくえん ~あいかわらずなぼく。の場合~

 いや、ほんと、これはすごい。素晴らしい。胸が震える。心に迫る。何て、何て美しい世界。そして何て醜く、浅ましく、汚らしい世界。

 どうしてエロゲって時々、こんな奇跡のような作品を生み出してしまうんだろ。

 ああ、エロゲオタやっていて良かった。いままでこのジャンルに費やしてきた金も時間も惜しくない。だれに笑われても、嘲られてもかまわない。

 それほどに素晴らしい。美しい。全然オタク受けしそうにないし、じっさい、一部のファンから熱烈な支持を受けたほかは、特に話題にもならなかったみたいだけれどね。

 たしかにそれもわからなくはない。何しろ、あまりにも暗すぎる。

 ある作品が広く愛されるためには、いくつかの条件を満たしている必要がある。主人公が魅力的な好人物であること。読者の注意を集めるに足るサスペンスフルな展開であること。その他いろいろ。

 しかし、それ以上に重要なのは、ある種の条件を「満たさない」ことだ。つまり、伏線を適当に放り出したり、なぞを出しておいて解かなかったり、主人公をあっさり殺したりしてはいけないのだ。

 「やるべきこと」は曖昧でも、「やってはいけないこと」はわりと厳密に決まっている。ある作品をひとつの限界に規定する、エンターテインメントのデッドライン。

 TYPE-MOONを例に取るなら、『月姫』も『Fate/stay night』も、その線を前にして足踏みした印象がある。良識的な判断だといえるだろう。

 しかし、この作品は、『月姫』が、『Fate』が立ち止まったその限界点を、あたりまえのように越えていく。

 いや、越えちゃだめなんだって。一般受けしなくなるんだって。でも、越えていく。結果的に生まれたものは、ただ娯楽作品と呼ぶにはあまりに重すぎる、異形の傑作である。

 そこらのちょっと美少女が可哀想な目にあうだけの「鬱ゲー」とは次元が違う。エロゲとしては、これはもう、異端中の異端と言うしかないだろう。

 しかし、それでもなお、ぼくはこのソフトがエロゲ全体を代表するに足る作品であることを疑わない。

 ある作品があるジャンルにとって「例外」であると同時に「代表」である、そういうことはありえると思うのだ。

 たとえば、70年代のロボットアニメ全体の傾向を考えるなら、『機動戦士ガンダム』はあきらかに「異端」であり、「例外」だろう。

 ダークな設定、ハードな展開、ネガティヴな主人公、その当時としては常識はずれの作品だったはずだ。しかし、それにもかかわらず、『ガンダム』が70年代ロボットアニメの代表作であることを否定するひとはいないと思う(だれかいますか?)。

 こういうことは無数にある。なぜなら、並はずれた傑作とは、まさに並はずれているが故に、ほかの作品とはかけ離れた個性をそなえているものだからだ。

 だから、ぼくはちっともエロゲらしくないこの作品こそ、最もエロゲらしいのだと思う。

 この作品の素晴らしさは、徹底して真摯に人間を見つめていながら、やっぱりただのエロゲであり、オタクポルノであり、オナニーのオカズであることに変わりはないところだ。

 だって、こんな劇毒みたいな作品が、『メイドさんしぃしー』とかと並べて売られているんだぜ? ぼくはその事実だけでおもしろいと思う。

 ほかのエロゲとは全然違っていて、それでいて、何も変わらない。だからこそ名作なのだ。

 ぼくの言っていることがわかってもらえるだろうか? 正直、自分でもちょっとわからなくなってきているのだが。

 いやもう、とにかく、素晴らしい。ぼくが上にあげた作品は、ほとんどが「いくらか欠点はあるけれど、圧倒的な長所がその欠点を埋め合わせている」ものなのだけれど、『SWAN SONG』は非常に完成度が高い。いくらか瑕疵はあるにせよ、大きな難点は見あたらない。

 「エロ」だの「萌え」だのといった卑俗な要素と、もっと気高い、崇高な要素が、ここまでシームレスに繋がっている作品を初めて見た気がする。

 きれいはきたない。きたないはきれい。本当は、卑俗なものと崇高なものをはっきり区別することなど、だれにも出来はしないはずなのだ。

 あるひとつの作品が、ただのオナニーのオカズであり、同時に、この上もなく感動的な名作である。そういうことがある。そういうことが、ここに、あるのである。

 まいったね、ほんと。