『つどうメイク・マイ・デイ』

「書類をちょろまかして持ってきたぞ! さあ、テッサたんはどこだ?」
「それがな、いないんじゃ」
 コートニーの返事に、はげしくきょろきょろ動いていたシールド氏の首がぴたりと止まった。
「なんだと? ここで待ってるって話だったじゃないか。M6A3を持ってきたら、彼女がナイチンゲール風の古式ゆかしい看護婦衣装で、わしをあれこれ看病してくれると――」
「いやすまん。嘘だ」

 そのとき、運命は少年からすべてを奪い去った。

 長い日々を過ごした学び舎はがれきと化し、その月々の思い出もまた、灰燼のなかへ消え去った。

 心寄せた仲間たちは銃弾に倒れ、あるいは散り散りとなり、ただひとり愛した少女はどことも知れぬ場所に連れ去られて行った。

 少年の名は相良宗介。かつて伝説の傭兵部隊〈ミスリル〉で最強と謳われた男。

 しかし、その〈ミスリル〉ももはやない。何もかも失った宗介にのこされたものは、漆黒の意思と一本の銃。かれは拳銃に弾をこめ、非情なる運命への絶望的闘争を開始する。

 愛惜を踏みしめて、前へ。

 懐旧を踏みこえて、前へ。前へ。

 絶望を踏みにじり、前へ。前へ。前へ!

 孤独なるたたかいは少年を一匹の孤狼へと変えていく。傷ついた足を引きずりすすむ、手負いの狼。

 もはやその瞳に甘さはなく、その手に宿るは殺意のみ。しかし、いま、壮介のもとに仲間たちが帰ってくる。そして、新たな力を得た相棒が。

 孤狼はもはや孤影ならず。世界を影から支配する巨大組織〈アマルガム〉に対し、遂に反撃ののろしが上がる!

 いよいよクライマックスを迎え、さらに盛り上がる『フルメタル・パニック!』最新刊!

 この巻では、前巻では消息を絶ったままだった〈ミスリル〉の残党たちにスポットがあたる。壮介がかなめを求め、ひとりさすらっていた頃、かれらは何をしていたのか?

 もちろん、南海岸でバカンスを楽しんでいたわけではなかった。かれらもまた、〈アマルガム〉に対する命懸けの闘争を開始していたのである。

 〈アマルガム〉の圧倒的武威をまえに、既に数しれぬ仲間たちが倒れて行った。しかし、だからこそ、生きのこった者たちの結束は固い。

 基地もなく、補給もない暗黒の状況下で、テッサは古強者の男たちを指揮しつづける。

 あまたの戦場を生きのびてきた鋼の男たちが、年端もいかぬ少女の命令に命を預け、ひたすらにたたかう。僚友が倒れればそのしかばねを踏みこえてすすみ、テッサの指令を叶えようとする。

 正義のためでなく、平和のためでなく。愛のためでなく、友誼のためですらなく。ただ、敵弾に倒れた仲間たちの鎮魂のために。それが戦場に生きる男たちの流儀。

 そしてついに新型機ARX8〈レーバテイン〉が姿をあらわす。この世で宗介だけが操縦できるこの最強兵器は、はたして〈アマルガム〉に対する切り札となりえるのだろうか?

 そして、〈ミスリル〉を裏切り、その手を仲間の血で染めたあの男の真意とは? 離れ離れのままの宗介とかなめの再会の日は来るのか?

 いくつものなぞをのこしたまま、物語はさらに先へとつながっていく。

 いままでは雑誌連載ののちに単行本化されていたが、ここから先の巻は、書下ろしでの出版が決定しているという。

 さらなる激動の展開を期待しつつ、宗介たちとの再会の日を期待することにしたい。

 最終決戦の日は近い。