『恋愛』が好き。

REN-AI(恋愛) (1) (Princess comics)

REN-AI(恋愛) (1) (Princess comics)

 ひさしぶりに高河ゆんの『恋愛』を読みかえしました。

 ぼくはこの漫画が好きです。とてもとても、とても、好きです。

 いままで読んだすべての漫画のなかで、最も好きだといっても過言ではないでしょう。

 以前は数日とあけず読みかえしたりしたものですが、ここ最近は読んでいませんでした。

 だからその頃の思い入れも冷めたかと思っていたけれど、今日あらためて読んでみたら、やっぱり好きですね。初めて読んだときと同じところで衝撃を受ける。

 何がそこまで好きなのか? それが巧く説明できない。初読から10年以上経ちますが、そのあいだずっと考えているのにさっぱりことばにならない。ことばにならないくらい好きだ、ということでもある。

 他愛ないといえば他愛ないお話です。あるアイドルに恋をした美少年が、自分もアイドルとしてのし上がっていく、という物語。

 いかにも非現実的だし、唐突な展開だし、しかも中途半端なところで終わっている。高河ゆんの欠点満載。しかし、どんなに欠点を並べ立てても、愛情が揺らぐことはない。

 たぶん、ぼくは本来、非常に短気で感情的な人間なんだと思います。激情の性、とでもいうか。

 それを抑えて、抑えて、一見冷静に生活している。その抑圧された感情が、この作品の鋭さに共感するのでしょう。

 ある意味、非常にやばい話なのです。会ったことも話したこともないアイドルに恋をしてしまう主人公は、ストーカー一歩手前です(美形だけど)。

 その思い込みの激しさには、あきらかに異常なものがある。成熟した、おとなの恋愛感情とは、とてもいえない。でも、そのストレートな激しさに惹かれます。

 その種の表現は主人公のことだけじゃなくて、たとえばその主人公がデビューしたとき、そこにファンレターが送られてくるんですね。まだ、顔写真を発表しただけだというのに。

 で、その手紙には主人公の名前だけが延々と書きつづられている。

 「これ――… 多分ほかに言葉が出てこなかったんだ ぼくの名前しか ぼくの名前しか」。

 顔写真一枚で、ですよ。おかしいですよね。狂っていますよね。でも、たぶんその種の狂気はぼくのなかにも眠っている。

 ぼくにはこのファンレターの書き手のきもちがわかるような気がする。その写真を見て、彼女は(「彼女」だと思うのだけれど)、気が狂うような思いに囚われて、ことばをさがしたに違いない。

 自分の感情を的確にあらわせることばを探し出そうと、考えあぐねたに違いない。でも、見つからなかった。出てくるものはただかれの名前だけ。

 これは勿論、ものすごくきもちの悪い話で、でも、ぼくはそのきもちの悪さが好きなんですね。ぼくもたぶん「そっち側」の人間だと思う。

 この激しさ。いや、激しさという表現も違うな……。直観力、とでもいえばいいのか。

 たった一枚の絵や写真や、ことばの切れ端などに電撃的に感応してしまう、異常に鋭い感性。それがぼくを惹きつける。

 ああもう、ほんとに好きだわ。どうしましょう。

 ラブ。