ピラミッドに書店開店。


 昨日、ジュンク堂書店の新潟支店が開店したので、早速、あそびに行ってまいりました。

 その蔵書数、実に百万冊とも、その総面積は全国で十指に入るとも、事前に聞き及んでいたので、期待に胸をはずませて行ったのですが――いやあ、これは凄い。

 このたび、ジュンク堂が入ることになったのは、「プラーカ3」と呼ばれる新潟駅南口の駅ビル。

 いまを去ること二十余年、地域の期待を背負って建築されたものの、経営に問題があったものか、それともそもそもそれだけの地盤がなかったのか、しだいに業績悪化が続き、いまではピラミッドさながらの空ビルと化して、むなしくうつろな巨体をさらしているという、いわく付きの建物です。

 そういう薄汚れたビルディングで、知の殿堂ともいうべき書店がひらく。これが行かずにいられましょうか。

 いずれがいずれに合わせたものか、その前日には紀伊国屋書店が三十年ぶりの移転を果たしているのですが、こちらはまあ、ふつうの大型書店?といった印象で、それほど衝撃はありませんでした。

 しかし、このジュンク堂は素晴らしかった。

 「プラーカ3」の一階と地下一階をそのまま書店にしているので、とにかく広い。なかへ入って見わたすと、本、本、本がずらりと並んでいる。この恍惚。棚と棚との空間も十分、非常に心地よい空間でした。

 いくら広いとはいってもそこは2フロア、ビルひとつが書店になっているどこやらの店に比べれば、それほど広くはないのかもしれません。

 しかし、何というか、体感面積が広いのですね。あっちへ行っても本、こっちへ行っても本。

 新書だけ、文庫だけ、漫画だけ、専門書だけ採っても膨大な量があり、このままここが核シェルターになっても暇つぶしには困らないだろうと思わせます。

 ボルヘスのいう「バベルの図書館」から2フロアを切り取ったような、といえばさすがに大袈裟だけれど、個人的にはそんな印象でした。

 ポール・ニザンの『アデン・アラビア』を読んでは戻し、マゾッホの『毛皮のヴィーナス』を見てはよろこび、よしながふみのボーイズ・ラブ漫画を見つけては今度買いに来ようと決意し、ということで、大変楽しめました。

 もっとも、レジにできた長蛇の列にならぶつもりにはなれなかったので、何も買わずに帰りましたが。

 もちろん、いまなら、家にいながらにしてこれ以上の在庫を検索することもできるでしょう。

 しかし、やはり目の前に本がある、ひらいて読むことができるというこのよろこび、これは何物にも換えがたい。

 この光景は、おそらくは一世紀、否、半世紀の先には情報化がすすみ、地上の何処にも見られなくなっているかもしれない光景、やがては老人たちの懐旧のなかにしか、その存在をとどめなくなるかもしれぬ光景。

 しかし、いま、たしかにそれはここにあり、ぼくを楽しませてくれている。その事実を思うと、いまこのときに生きているよろこびが切々と胸をひたしていきます。ああ、生きていて良かった。

 ぼくもかんたんな男だな。