知っている方のほうが多いと思うが、Amazonでは中古品も売買されている。

 そのなかでも本の値段は安く、はなはだしきは1円で取引されている作品も少なくない。

 1円というと、いかにも安売りという印象になるが、なかには名作と呼ぶにふさわしい作品も混じっている。

 今回はそのなかからとりあえずSF、ファンタジー小説の名作を選んでみた。そのうち、ライトノベル編とかミステリ編もやるかも。やらないかも。

 さすがに現役バリバリの作家はなかなか1円の作品がないので、多少片寄ったリストになった。もちろん、探せばまだまだあるだろうが、疲れたのでこのくらいで止めておく。

 ご利用の際には、以下の3点にご注意あれ。

1.現時点では1円で買える商品も、将来的には売り切れる可能性があります。
2.ぼくが名作だと言い張ったからといって、あなたの好みに合うとは限りません。
3.本体価格は1円ですが、送料などがかかるため、じっさいにはもっと高額の買い物になります。

 そういうことで、よろしく。

 長いので、以下は「続きを読む」記法で。
アイザック・アシモフ

神々自身 (ハヤカワ文庫SF)

神々自身 (ハヤカワ文庫SF)

銀河帝国の興亡 1 (創元推理文庫 604-1)

銀河帝国の興亡 1 (創元推理文庫 604-1)

 『神々自身』はアシモフの長篇で唯一のダブルクラウン作品。たぶんアシモフの作品のなかでいちばんおもしろいと思う。

 第一章で絶望的な展開を描き、第二章でそれを裏側から綴り、そして第三章でひっくり返す、という構成の妙が光っている。

 『銀河帝国の興亡』はアシモフの代表作のひとつ。このタイトルをもじって『銀河帝国の弘法も筆の誤り』という小説が書いた作家が、いるとか、いないとか。

アーサー・C・クラーク

2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF 243)

2010年宇宙の旅 (海外SFノヴェルズ)

2010年宇宙の旅 (海外SFノヴェルズ)

神の鉄槌 (海外SFノヴェルズ)

神の鉄槌 (海外SFノヴェルズ)

宇宙のランデヴー (ハヤカワ文庫 SF (629))

宇宙のランデヴー (ハヤカワ文庫 SF (629))

渇きの海 (ハヤカワ文庫 SF 235)

渇きの海 (ハヤカワ文庫 SF 235)

10の世界の物語 (ハヤカワ文庫 SF (617))

10の世界の物語 (ハヤカワ文庫 SF (617))

 アーサー・C・クラークは現代最高のハードSF作家である。その作品は一様にレベルが高い。

 なかでもヒューゴー、ネビュラを独占し、ダブルクラウンに輝いた『宇宙のランデヴー』辺りは名作といっていいだろう。

 この小説の最後の一行は、SF史上最も胸躍る一行のひとつ、といっていいのではないだろうか。

ウィリアム・ギブスン

 『ヴァーチャル・ライト』はギブスンの大四長篇。

 『ニューロマンサー』の破滅的な雰囲気はないが、はるかに読みやすい。「サイバーパンク」と呼ぶにはあまりにも軽快な作品といえよう。

 ただ、ギブスンお得意の細部の描きこみは今回も光っている。何者もウィリアム・ギブスンが書くようには書くことができない。天才のあかしである。

 ちなみにこの作品の舞台は2005年、つまり現在から見れば「近過去」だ。

サミュエル・R・ディレイニー

ノヴァ (ハヤカワ文庫SF)

ノヴァ (ハヤカワ文庫SF)

 サミュエル・R・ディレイニーは現代SFで最も知的で難解な作品を書く作家として知られている。

 しかし、この『ノヴァ』辺りは普通のスペースオペラとして読むこともできるだろう。その次元で読んだとしてもとにかくかっこいい。スマートである。

 表紙がかっこいいんだけれど、画像が出ないなあ。残念。

タニス・リー

タマスターラー (ハヤカワ文庫FT)

タマスターラー (ハヤカワ文庫FT)

 タニス・リーはおそらく現代ファンタジー最高の作家である。

 ほかの作家が「物語」の次元にとどまっているのに対し、リーの小説は神話の高みに到達している。

 本書はそのリーがインドを舞台にして描いた短編集。妖しい世界が貴方を待っている。

デイヴィッド・ブリン

知性化戦争〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

知性化戦争〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

知性化戦争〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

知性化戦争〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

 ブリンは『スタータイド・ライジング』でダブルクラウンを、『知性化戦争』でヒューゴー賞を受賞した。

 両作品とも同じ宇宙の話で、さまざまな宇宙人が登場する。また、イルカや猿などが知性化して人類と供に進化の道を歩んでいる辺りもユニークだ。

 とてもおもしろい小説だが、長くて厚いことが最大の欠点か。

フレデリック・ポール

ゲイトウエイ (ハヤカワ文庫SF)

ゲイトウエイ (ハヤカワ文庫SF)

ゲイトウエイへの旅 (ハヤカワ文庫SF)

ゲイトウエイへの旅 (ハヤカワ文庫SF)

 『ゲイトウエイ』はヒューゴー賞ネビュラ賞を独占受賞した名作である。

 「ヒーチー人」と呼ばれるなぞの異星人が残した宇宙船に乗り、宇宙の彼方まで旅する人びとの運命を描いている。

 しかし、この宇宙船、人類の科学力ではどこへ飛んでいくのか、さっぱりわからない。銀河系の外まで飛び出して二度と戻らないかもしれないのだ!

 作品背景が飢餓時代であることもあり、必然的に実に暗い話になるが、とにかくおもしろい。続編は明るくなったかわりに魅力が褪せた気がする。

マイケル・ムアコック

 ムアコックヒロイック・ファンタジーのひとつ、『エレコーゼ・サーガ』の第1巻である。数あるヒロイック・ファンタジーのなかでも、これほど凄惨、残酷、絶望的な結末を見る作品はないのではないだろうか。『エルリック』に匹敵する傑作である。

R・A・マカヴォイ

ダミアーノ (ハヤカワ文庫FT―魔法の歌)

ダミアーノ (ハヤカワ文庫FT―魔法の歌)

サーラ (ハヤカワ文庫FT―魔法の歌)

サーラ (ハヤカワ文庫FT―魔法の歌)

ラファエル (ハヤカワ文庫FT―魔法の歌)

ラファエル (ハヤカワ文庫FT―魔法の歌)

黒龍とお茶を (ハヤカワ文庫FT)

黒龍とお茶を (ハヤカワ文庫FT)

 世の中には「泣かせる」という触れ込みの小説が数多くあるが、ぼくのなかではその最高峰にあたるのがこの『魔法の歌』である。

 ルネサンス期を舞台に、堕ちた天使と歌う魔術師の遍歴を綴っている。この作品のエピローグは、ほんとに感動した。

 『黒竜とお茶を』は軽い童話的作品。

大原まり子

タイム・リーパー (ハヤカワ文庫JA)

タイム・リーパー (ハヤカワ文庫JA)

タイム・リーパー

タイム・リーパー

戦争を演じた神々たち

戦争を演じた神々たち

銀河郵便は

銀河郵便は"愛"を運ぶ

ハイブリッド・チャイルド (ハヤカワ文庫JA)

ハイブリッド・チャイルド (ハヤカワ文庫JA)

銀河郵便は“愛”を運ぶ (徳間デュアル文庫)

銀河郵便は“愛”を運ぶ (徳間デュアル文庫)

メンタル・フィメール (ハヤカワ文庫JA)

メンタル・フィメール (ハヤカワ文庫JA)

未来視たち (ハヤカワ文庫JA)

未来視たち (ハヤカワ文庫JA)

 大原まり子は現代SF屈指の映像的作家である。

 『未来視たち』、『メンタル・フィメール』といった短編集にはその天才のすべてが収められている。「グレーテルの焼死」なんて、タイトルの段階で既にかっこいいもんなあ。

 とどめは長篇『ハイブリッド・チャイルド』。逃亡した半機械生命体ヨナを中軸に、人類と機械帝国の最後の興亡を描いた名作。

上遠野浩平

ぼくらは虚空に夜を視る (徳間デュアル文庫)

ぼくらは虚空に夜を視る (徳間デュアル文庫)

 『ぼくらは虚空に夜を視る』は上遠野浩平のSF代表作。

 『ブギーポップ』で見せた切れ味は健在で、現実と虚構を鋭くシャッフルするその腕前は超一流。とにかくかっこいい。仮想現実SFの一方の頂点と言っていいと思う。

 それにしても、この未来史はいつか閉じる日が来るのだろうか。来ないような気がするなあ。

栗本薫

レダ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

レダ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

レダ〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

レダ〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

レダ〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

レダ〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

カローンの蜘蛛―トワイライト・サーガ

カローンの蜘蛛―トワイライト・サーガ

カナンの試練 (トワイライト・サーガ)

カナンの試練 (トワイライト・サーガ)

 『レダ』は栗本薫のSF代表作。

 『トワイライト・サーガ』は『グイン・サーガ』の数百、数千年後を舞台にしたヒロイック・ファンタジー。暗く美しい雰囲気が印象的。

 天野喜孝による主人公ゼフィール王子がとてつもなく美しいのだが、やっぱり画像は出ないのであった。残念。

小松左京

 『果しなき流れの果に』は小松左京ひとつの最高傑作であるにとどまらず、日本SFの代表作でもある。

 古代の恐竜が電話機の音に驚くという意表をつくオープニングを皮切りに、人類と支配者との20億年に渡る攻防を描いていく。

 さしずめ、日本版ワイドスクリーン・バロックというところか。その圧倒的ハッタリは無数の作家に影響を与えた。

笹本祐一

星のパイロット (ソノラマ文庫)

星のパイロット (ソノラマ文庫)

 『星のパイロット』はそののち『彗星狩り』、『ハイ・フロンティア』、『ブルー・プラネット』と続くシリーズの第一作。

 おんぼろ宇宙船で空をめざす「星のパイロット」たちの物語である。

 このシリーズ、ここで終わりなのかなあ。続きを読みたいんだけれど。無理かなあ。

瀬名秀明

パラサイト・イヴ

パラサイト・イヴ

BRAIN VALLEY〈上〉

BRAIN VALLEY〈上〉

BRAIN VALLEY〈下〉

BRAIN VALLEY〈下〉

BRAIN VALLEY〈上〉 (角川文庫)

BRAIN VALLEY〈上〉 (角川文庫)

BRAIN VALLEY〈下〉 (角川文庫)

BRAIN VALLEY〈下〉 (角川文庫)

BRAIN VALLEY〈下〉 (新潮文庫)

BRAIN VALLEY〈下〉 (新潮文庫)

BRAIN VALLEY〈上〉 (新潮文庫)

BRAIN VALLEY〈上〉 (新潮文庫)

八月の博物館

八月の博物館

八月の博物館 (角川文庫)

八月の博物館 (角川文庫)

 瀬名秀明をSF作家と呼べるかどうかは微妙なところである。しかし、日本SFに対しかれほど鋭い問題意識を以って対峙している作家はいないだろう。

 ここでは『八月の博物館』を特にお奨めしておく。『ドラえもん』にオマージュをささげ、ある少年のひと夏の冒険をメタフィクション風に描いている。二人のヒロインがやたらにかわいいのも印象的。

田中芳樹

タイタニア〈1〉疾風篇 (トクマ・ノベルズ)

タイタニア〈1〉疾風篇 (トクマ・ノベルズ)

タイタニア〈2 暴風篇〉 (トクマ・ノベルズ)

タイタニア〈2 暴風篇〉 (トクマ・ノベルズ)

タイタニア〈3 旋風篇〉 (トクマ・ノベルズ)

タイタニア〈3 旋風篇〉 (トクマ・ノベルズ)

 とりあえずここでは『銀河英雄伝説』は避けた(たくさんありすぎるから)。

 『タイタニア』は『銀英伝』と並ぶスペースオペラの秀作。人類が宇宙に広がった未来社会を舞台に、多彩な人物を用いて群像劇を綴っている。バルアミーとリディア姫に萌えないひとはいないはず(たぶん)。

 唯一にして最大の問題点は、一向に続きが出る気配がないことであろう。

谷甲州

 『ヴァレリア・ファイル』シリーズはサイバーパンク的雰囲気のSF長篇。のちに士郎政宗のイラストを得て再販されることになったが、これは最初の文庫版である。

 とにかくおもしろい小説だったという印象が、いまも鮮烈にのこっている。ツンデレヒロインのレティシアはもう少しかわいげがあってもいいと思うぞ。デレ少なすぎ。

野尻抱介

ヴェイスの盲点―クレギオン〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

ヴェイスの盲点―クレギオン〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

フェイダーリンクの鯨―クレギオン〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

フェイダーリンクの鯨―クレギオン〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

アンクスの海賊 クレギオン (3)

アンクスの海賊 クレギオン (3)

サリバン家のお引越し クレギオン (4)

サリバン家のお引越し クレギオン (4)

ベクフットの虜 クレギオン7 (ハヤカワ文庫 JA)

ベクフットの虜 クレギオン7 (ハヤカワ文庫 JA)

 『クレギオン』シリーズは野尻抱介富士見ファンタジア文庫で出版していたスペースオペラ&ハードSF長篇。既知の物理法則を破らないことが特徴だろうか。

 主人公たちが次つぎと宇宙規模の事件に遭遇する辺りはご都合主義だが、ほかの点ではとてもリアルだと思う。

 このシリーズも続編を読みたいけれど、無理かなあ。ライトノベルのSFはどうしてこう途中で終わるんだ!