ホーリーランド 14 (ジェッツコミックス)

ホーリーランド 14 (ジェッツコミックス)

「傷だらけなの…ね… あなた 傷―― 抗って抗って… たくさんついた 傷…… 毎日泣いてる …それでも やめないの 耐えられる? 私は出来ない これは…あなたに あなたはまだ戦える 見つけて あなたの――」

 第14巻。

 前巻でプロ格闘家を目指すヨシトを打ち破ったユウの技量は、既にストリートのレベルを乗り越えようとしていた。しかし、この先どの道へ進むべきなのか、未だに迷ってもいた。

 そんな時、何者かの手によってストリートに依存性の強いドラッグがばら撒かれるという事件が起こる。

 既にユウやマサキの友人たちにまでその魔性の薬は広まろうとしていた。はたしてユウは、マサキは、この危機に対しどのような手を打つのか?

 というわけで、今回は次の話へ続くインターミッション。あまり大きな出来事は起こらない。

 ストリートの不良狩りから始まったユウによる「強さ」の探求は、前回、プロ予備軍のヨシトを破ることによって頂点に達した印象がある。そこで、この巻からは作品の方向性が大きく変わっていく。

 個人戦から集団戦へ。今回、なぞの組織による合法ドラッグ売買という問題を端緒として、物語はユウ個人の視点から外れていく。

 もちろん、いままで通り主人公がユウであることには変わりはない。しかし、あいてが組織である以上、もはやユウ個人、マサキ個人でどうにかできる問題ではない。

 それは街全体の問題なのであり、ユウやマサキは街の代表として行動することを余儀なくされる。したがって、作品全体の雰囲気もこれまでとは変わってくる。

 はたしてこれからいままでのようにストイックな展開が続けられるのか、それとも何かべつの魅力で勝負するのか、心配でもあり、たのしみでもある。

 そもそもこの漫画のおもしろさは、「不良狩り」としてストリートファイトで頭角をあらわしていく少年を主人公としながら、ただの喧嘩漫画では終わらないところにある。

 ユウは長いあいだのいじめで溜まった心よどみを暴力で発散するが、しかしどんなに強くなってもその心が癒されることはない。

 ユウの先輩格としてかれを善導するマサキにしても、未だ人生の進路に迷っているひとりの悲しい青年に過ぎない。

 喧嘩のスキルは傑出していても、かれらの将来は闇に閉ざされている。喧嘩が強いから格闘家になればいい、という問題ではないのである。

 その先行きの見えなさは、不透明な現代社会を象徴しているともいえるだろう。

 しかし、今回、物語の規模は一気に拡大する。そのためにテーマは薄らいでしまうのではないかということが、心配といえば心配である。たんなる大規模喧嘩漫画になってしまっては少々困る。

 それはそれで人気が出るかもしれないけれど、そうなったら『ホーリーランド』らしさは失われてしまうだろう。

 最終的にこの物語はどこへ落着するんだろう。おそらく最後にはユウはストリートを卒業することになるのだと思うが、絶対的な価値観を提示する人物が登場しないだけに、まだ先は読めない。

 『ろくでなしブルース』みたいになったらどうしよう。