エビアンワンダー 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダー 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダー 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダー 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダーREACT 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

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エビアンワンダーREACT 2 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

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「…あんたがいる世界なら」

 『エビアンワンダー』、全4巻堂々の完結である。

 途中、掲載雑誌が廃刊になって連載が中断するというトラブルがあったが、それを乗り越えて物語はたどりつくべき場所にたどりついた。

 未刊のまま放り出されることにならなくて本当に良かった。

 すべての因縁はある日、冬の森にひとりの少女が捨てられる場面から始まる。この美しい金髪の少女はその地を訪れた悪魔と契約し、悪人の魂を狩ってまわる忌まわしきもの「銀符」となる。

 契約の代償として彼女が得たものは、自分より弱く自分を見捨てない存在、ハウリィという名の弟だった。

 フレデリカはハウリィを連れて各地を旅し、さまざまな悪人を退治しながら、自分を捨てた両親をさがしもとめる。

 幼いこどもを捨てて生きのびた「悪」として、その魂を悪魔にささげるために。

 と、こうあらすじを書くといかにも深刻な話だが、おがきちかの絵柄はポップでキュートだ。しかし、その内容は決してありがちなファンタジーものの枠に捉えきれるものではない。

 善と悪、神と悪魔、そしてこの残酷な世界で生き抜くこと、フレデリカは無数の「悪」と対峙するなかで、深刻な倫理的問題と直面することになる。

 彼女は決して偽善をゆるさない。そして悪を犯しながら自己陶酔に耽る人間たちを、その胸の「炎の鷹」で焼き尽くし裁いていく。

 同時期に連載されている『Landreaall』と比較すると、この作品の世界は過酷である。だれもが必死に努力しなければ生きていくことすらできない世界。

 だから弱者はあっさりと悪の誘惑に染まり、さらに弱い者を踏みにじることになる。フレデリカはそんな弱者たちに対しても容赦しない。

 しかし、それならば弱いことはそれだけで罪なのだろうか? 弱さから自分を捨てた両親と再会するとき、彼女は殺すか許すかの決断を迫られる。

 ここらへんの「軽さ」と「重さ」が同居しているあたりがおがきちか独特の魅力だろう。

 そして、その先の結末にはとんでもない大どんでん返しが待ち受けている。そこまで読んだ上でいままでの展開を振りかえってみると、作者が最初からすべてを構想した上で物語を紡いでいたことがわかる。

 『Landreaall』でも時々この手のどんでん返しがあるけれど、いやあ、これにはおどろかされました。いったいどこに落とすのか思っていたんだけれど、まさかこんな手を使うとは。ある意味、禁じ手ではあるけれど、そうわかってみるとすべての帳尻が合う。

 光と闇の上位者が召還された超次元の法廷で、フレデリカが下す決断とは? はじめシニカルに始まったように見えた物語は、おどろくほどシリアスな結末を迎えることになる。

 あざやかに光差す最後の1ページは感動的である。ポップでありながら非情で残酷な、現代ファンタジーの収穫のひとつ。ファンタジー漫画なんてどれも同じだと思っているひとこそ読んでほしい一作だ。

 おがきちかはもっと有名になるべき作家だと思うなあ。