- 出版社/メーカー: TerraLunar
- 発売日: 2004/06/25
- メディア: CD-ROM
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おまけシナリオ「ぼくのたいせつなもの」、クリア。
『らくえん』のなかでムーナスのライバルメーカーであるミニミソフトが製作したことになっている作品である。わりと評判が良いので、たのしみにしていたのだが――うわ、いやな話だなあ。
このいやらしさは、あれだ、このあいだ読んだ川島誠の短篇「電話がなっている」に近い。
この話の主人公岡崎智樹は、生まれつき病弱な肉体のためにすべてをあきらめて生きてきた少年。かれにとって唯一の慰めは、明朗快活な同級生の少女、冬木茉優子だけだった。
思うようにならない肉体のせいで陰鬱な性格に育ったかれにとって、冬木の存在は憧れそのもの。しかし、ある日、衝撃的な事実があきらかになる。冬木の正体は人間ではなく、かれのからだへの臓器移植のために育てられた人工生命体「ケミカル」だというのだ。
どんなに人間そっくりに見えてもケミカルは人間ではなく、それどころか生物とすら見なされない。そのため、当然、人権もない。
それまでクラスの人気者だった彼女だが、ケミカルであるという事実がばれたその瞬間から、周囲の人間は彼女を「モノ」と見なすようになる。
そんな彼女を知樹はあくまで人間としてあつかおうとするが、既に限界が来ているかれの肉体を生きのびさせる唯一の方法は、彼女から移植を受けることだった。
冬木は人間なのか、それともただのケミカルに過ぎないのか? 自分が生きのこることを選ぶべきか、冬木を生かすことを選択するべきなのか? 知樹は苦悩する。
しかし、そのあいだにも知樹のからだは衰え、そして「調整」を受けた冬木のからだには変化が起こりはじめる――。
生身の美少女が「モノ」としてあつかわれ、壊れていく描写は森岡浩之の短篇「スパイス」に通じるものがある。いやあ、ほんと、いやな話だなあ。くけけけけけけ。
エロゲなんだからエロシーンもあり、『らくえん』本編にはその個所を使用した広告が登場する。そこにはこんなふうに書かれている。
自らスカートをたくし上げるヒロイン、茉優子。はたして誰に強要されているのだろうか? そして、このあと茉優子は……。首輪にも注目。キャラクターデザインは前作同様ミカミミカ氏。繊細なタッチは今回も健在だ。
物語やテーマにかんする言及はなし。この広告を見てここまで暗くて救いのない話を想像するひとはいないだろう。
本編の主人公側であるムーナスの作品ではなく、あえてこの作品をおまけとして添付したところに、製作スタッフの自虐精神を感じる。ほんと、どこまでひねくれているんだか。
でもまあ、せっかくの18禁なんだから、ぼくとしては簡単にコンシューマー移植できるような作品よりは、こういう作品をやりたいですね。
ちなみにこの作品の原画はアリスソフトを退社したKaren氏。はっきりいって本編よりキャッチーな絵柄です。いやあ、ほんと、ひねくれまくったセンスだよなあ。大好き。