今夜10時からNHK「にんげんドキュメント」で『攻殻機動隊』の神山監督の特集が放送されます。『攻殻』好きのひともそうでないひともぜひ見ましょう見ましょう。
この機会に神山監督が製作した『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』についてもう一度解説しておきたいと思います。
ミステリ、サスペンス、センス・オブ・ワンダーを兼ね備え、総合点ではテレビアニメ史上最高のエンターテインメントといっても過言ではない大傑作。まだ見ていないひとはこれから見るべし。絶対嵌まるって。
一般的なテレビアニメの倍以上の予算を蕩尽した映像の美麗さはいうまでもない。しかし、何といっても魅力的なのは細部に至るまで緻密に考えぬかれたシナリオでしょう。
第3話あたりまでは「うん、まあ、上手に『攻殻』の世界を映像化しましたね」という程度のものなんだけれど、第4話でなぞの超AI級ハッカー「笑い男」の名前が登場してから物語は錯綜の度合いを深めていく。
数年前、衆人環視のなかで犯罪を犯しながら、周囲の人間の視覚をリアルタイムでハッキングすることによって正体不明のまま消え失せた伝説の天才ハッカー。
未だにその動機も、背景も、性別すらも一切不明なまま、わずかに超絶的な電脳ハッキング技術のもち主であることのみ知られているその人物が、いま、ネットの闇から姿をあらわす。
そしてそれと並行して全く動機不明なままいくつもの犯罪が連鎖していく。かれらは「笑い男」に操られているのか? それとも何らかの組織が存在するのか?
少数精鋭のエリート部隊である公安九課は、「笑い男」の正体を求め事件に深入りしていくが、そこで彼女たちを待ち受けていたものは、国家的な陰謀の闇だった。
同じ頃、九課で使用されている思考戦車タチコマたちは、それぞれに個性的な進歩を始めていた。機械の枠をこえて進化していく機械たち。はたしてかれらの変容の果てには何が待ち受けているのか?
これら錯綜する物語がハイスピードで唯一の結末へとなだれ込んでいくクライマックスはまさに圧巻。
中盤、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が絡んでくる辺りは、正直いって本当に合理的な解決に辿り着くのか不安でした。大風呂敷を広げるだけ広げたまま、抽象的な結末に落とすのでは?
ところが、最後に至るとすべての謎は余りにも整然と解き明かされる。「笑い男」、『ライ麦畑でつかまえて』、タチコマ、トグサの成長、素子の過去、そして「STAND ALONE COMPLEX」――すべてがひとつにからみ合い、人類社会の未来を焙り出す。
あらゆる事件の中心にいるのは「笑い男」と呼ばれる男。最終話における「情報の墓場」での素子と「笑い男」の会話はきわめて示唆的です。いやあ、ほんと、おもしろいんですって。
いったいこの道標的傑作はどのように生み出されたのか? くわしくは本日10時「にんげんドキュメント」をご覧下さい(←NHKの手先)。
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