天使が開けた密室 (創元推理文庫)

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

 ……ありがとう。
 うれしかったよ、とても。
 その気持ちを言葉で伝えられなかったのが、残念だ。
 お礼の代わりに、わたしも、一つだけいいことをしていこうと思う。
 それが、本当に正しいのかどうかは、わからないのだけれど……。

 以前、富士見ミステリー文庫から刊行され、2冊であえなく中断していた倉西美波ものを復刊した一冊。

 うん、文句なしの傑作――とまでは行かないにしろ、なかなかの秀作なのではないでしょうか。こういう作品を探し出して拾ってくる東京創元社は偉いよなあ。ぼくなんて、富士ミスで出た頃は存在すら知らなかったよ。

 主人公は平凡な女子高校生の倉西美波。ある事情からどうしてもお金が必要になった彼女は、知人が紹介してくれた「ただ寝ているだけで日給5000円」のアルバイトを引き受けます。

 ところが、世の中、そんなうまい話が転がっているわけもなく、きつい仕事をさせられたあげく、密室殺人の容疑者にされてしまうのでした(どうもこの子はバイトを引き受けると殺人事件に巻き込まれる特異体質らしい)。

 最初はいやな奴ばかり出てくるのでいったいこの先どうなってしまうのかと思わせるのですが、最後は実にあと味さわやか。

 本格としても隙のない仕上がりで、キャラクター小説派の方にも、本格原理主義者の方にもご満足いただける作品と言っていいのではないかと。

 ただ、まあ、このシリーズが富士ミスで受けなかった理由もわからないことはない。なんといっても地味。

 聖マルグリット学園秘密の図書室で知識の蒐集にはげむしわがれ声の美少女、とかそういう強烈なキャラクターは出てこない。ライトノベルとしてはこれではきついかと。

 しかし、今回はミギーさんの素晴らしい表紙を得て、本としての品質が大幅向上しています。米澤穂信の次は谷原秋桜子の時代が来る! かもしれない。来るといいなあ。