さて、今年のカレンダーものこすところ、あと2日。毎年恒例のベストを選出するとしましょう。しかし、このベスト選出という行為に対しては、こんな意見もあります。

本棚の整理同様、web上においても自分の所有物や、観た・読んだものをきちんとリストアップしないではいられないのがオタク。感想文はまだよいとしても、主観入りまくりの☆や点数をつけて後々検索しやすいようにしたりするのが特徴。またそれにはランク付けという意味合いもあり、とかくオタクはこのランク付けが大好き。年末には必ずその年のベスト10など挙げて総括したり、実は一年間も我慢できないので上半期ベスト10などもしていたりします。さらに行き過ぎと、とにかく作品名がずらっと画面に並んでいるのが心地よいがため、ただ所有しているだけの本をデータベース化したり、今日買った本や気になっている本を感想もなしでひたすら律儀にblogに載せたりします。

 うう、完璧に分析されている。

 しかし、見抜かれても見抜かれてもその道を進まずにはいられないのが書痴の宿命。今年も懲りずにベストを選ぶぜ。

 まずは漫画から行こうと思いますが、漫画の場合、長期連載作品が多いので、『よつばと!』や『リアル』、『おお振り』など、毎年ベストに挙がりそうな作品は外すことにしました。キムタクがベストジーニストから外されたようなものだと思ってください。

 それでは、まず5位から。

5位 桂遊生丸『かしまし』★★★

 5位に『電撃大王』連載の萌え漫画が入りましたよ。

 主人公の男の子がある日突然女の子になってしまってほかの女の子といちゃいちゃするという、まあ、その、どうしようもないお話なんですが、でも、おもしろいんだよね。 

 とにかく漫画としての表現力が圧倒的。こんなに甘く切なくあたたかい漫画はほかにありませんよ!

 萌え漫画なんて紙資源の無駄とお考えの方も、騙されたと思って読んでみてくださいな。桂遊生丸はこれから来ますよ。

4位 羽海野チカハチミツとクローバー★★★★

ハチミツとクローバー 9 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 9 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)

 今年完結した作品ということで、4位に選ぶことにしました。

 まあ、いまさら薦めなくても皆さん読んでいるでしょうけれど、これは名作ですね。羽海野チカの傑出したデザイン能力とギャグセンスがいかんなく発揮された上に、全10巻にきちんと完結しているという奇跡的な作品です。

 今年公開された映画版も評判がいいようですし、もはや漫画史にのこることは確定済みといっていい気がします。

 客観的評価とラブ度のどちらも高いというめずらしい作品です。

3位 こうの史代『長い道』★★★★

長い道 (Action comics)

長い道 (Action comics)

 この作品も好きですねえ。

 ある意味ではごく他愛ない日常の風景を描いただけの作品ですが、細部に宿るその遊び心がたまりません。

 ある意味では、こんなに愛しい漫画はない。主役のふたりには、末永くしあわせに暮らしてほしいと心から思います。

 こうの史代の作品としては、雑誌『わしズム』に掲載された掌編「古い女」も圧巻の出来でした。自分の作品を吹き飛ばしてしまうような傑作を載せる小林よしのりは偉いのかもしれない。

2位 大場つぐみ小畑健DEATH NOTE★★★★☆

DEATH NOTE (10) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE (10) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE (11)

DEATH NOTE (11)

DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)

 やっぱり『DEATH NOTE』を落とすわけにはいかないでしょ。

 過去の漫画遍歴を眺めわたしても、こんなに次の週が楽しみだった作品はないかもしれません。『ヒカルの碁』という傑作原作を得てブレイクした小畑健の評価を決定付けた作品といえるでしょう。

 先へすすむほどに進化していく小畑絵には掛け値なしに震撼させられる思いでした。

 映画版も納得の出来だったので、見ていないひと(特にLファン)はDVDでチェックだ!

1位 玄鉄絢少女セクト★★★

少女セクト (メガストアコミックス)

少女セクト (メガストアコミックス)

少女セクト(2) (メガストアコミックス)

少女セクト(2) (メガストアコミックス)

 というわけで、『DEATH NOTE』を蹴落とした今年の首位はなんと百合エロ漫画! いいのか、それで! いいんだよ。ぼくのベストなんだから。

 ★★★★★を付けたよしながふみの『大奥』を落としてこちらを選ぶとはいかがなものかという気もするのですが、だって好きなんだもん。

 この作品のよさは、女の子同士の関係性というものを非常に豊かに描き出しているところですね。いまのところ、史上最高の百合漫画といえるのではないでしょうか。もう大好き。

 さて、お次は小説。

5位 あさのあつこ『バッテリー』★★★★☆

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (2) (角川文庫)

バッテリー (2) (角川文庫)

バッテリー 3 (角川文庫)

バッテリー 3 (角川文庫)

 いわずと知れたベストセラー。あさのあつこの野球小説です。ぼくのなかでは森絵都の『DIVE!!』とならぶ少年小説の最高峰ですね。

 ありきたりの成長小説や友情小説に落とすことを拒み、孤独な天才を描ききったところがいい。失敗寸前のぎりぎりのラインで踏みとどまって大成功した作品だと思います。

 ちなみに3巻までの評価です。4巻以降はちょっと落ちますね。それから、あさのあつこ作品では『テレパシー少女「蘭」』の漫画版がなかなか素晴らしい出来です。ご参考までに。

4位 飛浩隆『ラギッド・ガール』★★★★★

 去年のぼくにとっての最大のニュースはスタージョンの発見でした。今年のぼくにとってのそれは飛浩隆との出逢いでしょう。

 本当は『バッテリー』を落として『グラン・ヴァカンス』をいれてもいいくらいお気に入りの作家です。もう、なにもかもぼく好み。いままで読んだ日本SFではベストかも。

 しかし、たった2冊目でここまで描いてしまって、この先、どうするつもりなんでしょう。何年でも待ちますから、次作をよろしくお願いします。

3位 グレッグ・イーガン『宇宙消失』★★★★★

宇宙消失 (創元SF文庫)

宇宙消失 (創元SF文庫)

 今年のはじめにこれを読んだ時は「今年のベスト決定!」と思いました。それくらい凄い小説。やっぱりこのひとは凄すぎる。

 知らないひとは現代SFのディープインパクトだと思っていただければ間違いありません。2着以下を十馬身くらい離してトップ独走中の作家です。

 この『宇宙消失』では量子力学を用いて驚愕の世界観を描き出して見せます。読む前と後では世界が違って見える、そういう真のハードSFといっていでしょう。

2位 シオドア・スタージョン『一角獣・多角獣』★★★★★

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

 もしこの世に完璧に美しい短編集というものがあるとしたら、それはこの『一角獣、多角獣』かもしれません。

 惜しまれつつも絶版となり、以後数十年入手困難の状態が続き、ネット上では数万円もの価格で取引されていた「幻の一冊」ですが、今年、ようやく復刊。

 そして中身を読んでみると、なるほど、これは素晴らしいとしかいいようがない。ぼくの読書人生でも、ティプトリーの『愛はさだめ、さだめは死』と争う、最高クラスの短編集です。絶品。

1位 グレッグ・イーガン順列都市★★★★★

順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

 今年のベストというか、いままで読んだSFのなかでもベストかも。前作『宇宙消失』もオールタイムベスト級の傑作だったけれど、『順列都市』はそれを上回るなあ。

 そのスケールはSF史上――というか、人類文学史上最大級。もう仮想現実SFではこれを超える作品は書かれないかもしれません。

 圧巻はクライマックスのカタストロフィ。人間の想像力によって導き出されるセンス・オブ・ワンダーの極限がここにある。最高!

 ああ、今年もおもしろい本をたくさん読めてしあわせだった。