おとぎの国の科学

おとぎの国の科学

 エッセイは苦手だ、と正直に告白する著者によるエッセイ集。

 瀬名秀明はこの十年間、作家として活動する傍ら、さまざまなノンフィクションを書き綴ってきた。本書にはそのなかからえり抜かれた文章が収められている。ほとんどは、科学にかんするものだ。

 といっても、文系の皆さんもご心配なく。たしかに、この本に収録された文章のいくつかは、かなり専門的な分野に足を踏み入れている。しかし、その内容が不必要に難解になることはない。

 なにより科学と物語に対する瀬名の態度は真摯で誠実であり、そして時にはロマンティックですらある。「おとぎの国の科学」というタイトルは本書の本質的な部分を過不足なくあらわしていると思う。

 瀬名の小説の読者なら、本書をかれがいままで書いてきた小説の副読本として読むこともできるだろう。じっさい、本書では、臨死体験、博物館、プラネタリウム、ロボットと、瀬名が小説で取り上げた題材が小説とは異なる形で取り上げられているのである。

 べつの意味で注目にあたいするのが『攻殻機動隊 SATAND ALONE COMPLEX』を撮った神山健治監督との対談。いうまでもなく、『攻殻機動隊』は サイボーグやロボットが多数登場するSFアニメーションの傑作である。

 瀬名と神山は、ロボットを軸にして、人間のアイデンティティ、創作におけるオリジナリティといった難問にメスを入れていく。この対談を読むためだけにでも、この本を手に取る価値はあるだろう。美しい本である。