anim. 3 (ヤングジャンプコミックス)

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「そこまでして助ける命がこの東京にどれだけいる?」

 最終巻。

 数万もの人命を犠牲にした大地震をかろうじて生きのびた主人公一行。しかし、それすら来たるべき超災害の前兆に過ぎなかった。

 あらゆるインフラを切断された死都大東京に、いま、水没の危機が迫る! はたしてその最悪の展開を乗り切ることは可能なのか。

 生きのびること、ただそれだけを目指して、さいごの賭けが始まる――というわけで、盛り上がりそうな展開ではあるのだが、実はあまり盛り上がらない。理由はいくつか挙げられるだろうが、ようするに何もかも中途半端なのだ。

 主人公の人格的成長にせよ、被災地の過酷な現実にせよ、限界状況でむき出しになる人間模様にせよ、あるいは想定外の事態を前にぎりぎりの選択を迫られる首脳陣の描写にせよ、すべてがあまりにも半端なまま放り出されている。

 たしかに、架空の大災害をリアルに描き出したいという志は伝わってくる。しかし、登場人物の行動がどうにもステロタイプで説得力に欠ける。

 どうもこの作家たちは人間の醜さや浅はかさを描くことがリアルだと捉えているように思える。もちろん、災害時になればそういったものが露呈されるのは当然だろうが、それにしても浅薄で類型的な人間描写にとどまっていると思う。

 たとえば、ある場面では、危険地帯から救出された男が、美少女フィギュアをもとめて倒壊したビルのなかへ戻っていく。ばかなオタク。

 作者はたぶんこういう描写を通して、「こんな人間でも命懸けで助けなければならないのか?」と問い掛けたいのだろう。しかし、その問題提起は結局なんら実を結ぶことなく放り出される。

 いったいこの作者たちはこの物語全体を通して何を訴えたかったのだろう? 原作担当者のヒントはあとがきにある。

 どうやら「いざというとき、この漫画を読んでいれば生きのびられる」という「災害啓蒙漫画」を描きたかったようなのだ。それ自体は悪くないと思う。ただ、それならそれで一本の漫画としておもしろくなければだれも読まないだろう。

 第1巻の時点ではもう少し魅力的な作品になるかと思われたのだが、結局は災害ものによくある竜頭蛇尾の展開に終わってしまった。

 この種の災害ものでは視点をどこに置くかが重要になる。たとえば、現在漫画化が進んでいる「日本沈没」では、来たるべき大災害の実相を知るほんの数人の人間を主人公にして、それ以外の大衆は切り捨てている。

 しかし、この作品は高い視点と低い視点を並行して描こうとして、そのいずれも半端なままに終わらせてしまっている。東京沈没という壮大な素材も、作品内で活かされることはなかった。

 結局、なすすべもなく関東は水底に沈んだ。おそらくほとんどの都民が死に絶えたことだろう。首都を失った日本はこれからどのように変わっていくのだろう。この漫画はその疑問に応えてはくれない。

 ただ無能な政府と無策な人びとの愚かしさだけが苦い読後感をのこす。主人公たちだけ生きのびていればいいってものじゃないよなあ。とにかく残念な作品であった。ああ。