チャーリーとチョコレート工場 [DVD]

チャーリーとチョコレート工場 [DVD]

 素晴らしい作品だった。あまりの完成度に言葉も出ない。

 劇場公開時に観にいくべきか迷ったのだが、結局、そのときは見送った。その判断が間違えていたとは思わない。もともとあまり映画館が好きではないのだ。

 しかし、DVDになったらすぐに見ておくべきだった。ぼくがここ数年で見た映画のなかでも文句なしのベスト、ゆたかな想像力に満ちた夢のような(悪夢のような)傑作である。

 タイトルロールのチャーリーは、貧しい家庭に育った心優しい少年。あまりにも貧しいものだから、かれがチョコレートを食べられるのは年に一度、誕生日の日だけだ。

 ある日、そんなかれの目にとんでもないニュースが飛び込んでくる。かれの家の前にある世界最大のチョコレート工場の主、ウィリー・ウォンカが、世界中から5人のこどもを選び、工場に招待するというのだ。しかも、優勝者には信じられないような賞品が贈られるとか。

 工場に招待される資格があるのは、世界中のチョコのなかに5枚だけ仕込まれた黄金のチケットを入手したものだけ。チャーリーは幸運にもそのチケットを手に入れるが、チョコレート工場には想像を絶する秘密が待ち受けていたのだった――と物語は進んでいく。

 じつによく練られた脚本で、映画が始まって30分が過ぎる頃には、すっかりぼくはチャーリーを好きになっていた(ちょっといい子すぎるけれども)。

 また、ジョニー・デップ演じるウィリー・ウォンカも非常によく描けている。チョコレート作りの天才でありながら、社交性に乏しく、ほとんどまともにひとと話すこともできない変人。

 物語の主人公はチャーリーなのだが、監督の共感はあきらかにこのウォンカに寄せられている。夢の国のようなチョコレート工場を作りそこにひきこもるこの孤独な天才は、ひょっとしたらティム・バートンそのひとの自画像なのかもしれない。

 なんとなく、自宅に遊園地を作ってしまったマイケル・ジャクソンを思わせるところがある。あるいは、「パヴァリアの狂王」ルードヴィヒ2世や江戸川乱歩の小説の人物。

 だが、この物語の真の主人公は、チャーリーでもウォンカでもなく、人口楽園としてのチョコレート工場そのものだろう。徹底して人工的に彩色され、デザインされたこの工場の素晴らしさ。

 原作があのロアルド・ダールだけあって、そこには恐ろしく意地悪な罠が待ち受けているのだが、そうとわかっていても一度はこの工場を訪ねてみたいものだと思ってしまう。

 そして御伽噺には飛び切りのハッピーエンドが待っている。原作は読んでいないので、この結末が原作通りなのかどうかは知らない。

 ただ、山勘で言わせてもらうならば、かなりティム・バートンの脚色が入っているのではないだろうか。ダールならばもっとブラックな展開を選ぶように思う。

 いずれにしろ、本当に素晴らしいものを見せてもらった。また、大好きな映画が一本増えた。