遺す言葉、その他の短篇 (海外SFノヴェルズ)

遺す言葉、その他の短篇 (海外SFノヴェルズ)

 アイリーン・ガンの「遺す言葉、その他の短篇」を読みはじめた。

 何十年もかけてSFを書きつづけて、それがいまようやく本一冊の分量になったという超遅筆作家の初(にして、最後になるかもしれない)短編集である。

 もちろん、ただ筆が遅いだけの作家なら、あっというまに忘れ去られて終わったことだろう。筆の遅さを補うだけの魅力を秘めているに違いない(たぶん)。

 解説を読んだところ、非常に交友関係が広いひとらしく、本書にはサイバーパンクの帝王ウィリアム・ギブスンが序文を、SF作家マイケル・スワンウィックが詩(!)を寄せている。

 そして日本語版では巽孝之と小谷真里の対談が収録されて、さらに贅沢な本に仕上がっていると思う。

 この本の出版は、ダン・シモンズの『イリアム』やジーン・ウルフ「デス博士の島、その他の物語」とならんで、今年のSF界の注目トピックといえよう。

 ただ、各地の書評サイトをまわってみたところ、本書の評価は賛否両論といったところのようだ。

 「あの」アヴラム・デイヴィッドスンに私淑しているといった情報からも、イーガンやチャンのようなハードSF作家ではなく、むしろ異色作家系の作家であることがわかる。デイヴィッドスンは大好きな作家なので、読むのが楽しみだ。

 ところで、巽孝之は本来「中間管理職への出世戦略」というタイトルだった本書が、日本語版では「遺す言葉、その他の短篇」として刊行されたことに感慨深げだが、これは当然の改題だと思う。「中間管理職への出世戦略」なんて本、だれが読みたがる?