うぶこい~初恋成就戦争なんだからねッ!!~ (ジグザグノベルズ)

うぶこい~初恋成就戦争なんだからねッ!!~ (ジグザグノベルズ)

「成田君は今、悪霊に魅入られている状態です。そのため、身の回りの女のコたちに対して積極的になれないでいるんです」
「そう言えば……」
 確かに、アイツは昔から女のコに対して奥手だった。
「でも逆に言えば、彼が誰かを心底好きになった時、悪霊は彼に取り憑つのをやめ、消えていきます……」
「まぁ……何となく、わからないでもないけど」

 そうか? ぼくは全然わからないぞ。

 というわけで、絵に描いたようなご都合主義から始まる恋物語「うぶこい」を読んでみた。

 あるとき、ひとりの奥手な少年を囲む5人の少女のまえに天使があらわれる。かれらが言うには、悪霊に憑かれた少年を救うため、かれに恋をさせてほしいのだとか――という設定なのだが、はっきりいって説得力ゼロ。「設定のための設定」以外のなにものでもない。

 まあ、そこはいわば物語の初期条件に過ぎないから、読み飛ばしてもいい(萌えオタは心が広くないとやっていられない)。問題はお話の中身だ、中身。

 この小説は、おもしろいことに、分業で執筆されている。5人のヒロインを主人公にした五つの物語のうち、第1話と第5話を児玉新一郎が、第2話と第4話を柴はすみが、そして第3話をわかつきひかるが担当しているという。

 結果的に、各話ごとにはっきりと出来不出来がわかれる結果になった。この本にかんしては、だいたいどこのサイトの感想を読んでも、第3話と第4話の評判がいい。

 ぼくも同感。第3話のツンデレお嬢様と第4話のめがねっ子がよく書けていると思う。

 第1話は幼馴染みものなんだけれど、あまり進展もないまま終わり、第2話の妹(系キャラクター)ものもほとんど進展しないで終わって、さてどうしようかというところでのツンデレお嬢様は非常に美味しくいただけました。

 容姿端麗にして頭脳明敏、ただひとつの悩みは生まれつきの貧乳という彼女は、胸にパットをいれているところを主人公に見られ(たと思い込み)、脅迫されて性奴隷に――じゃなくて、主人公を下僕にしてこき使うことになる。

 しかし、そのうちにかれに対する思いが芽生えてきて、と、まあ、ここらへんはツンデレの王道ですね。

 やっぱりツンデレのテンプレっぽい印象は受けるけれど、まずまずさわやかな作品。さいごの照れ照れしたお嬢様がかわいい。

 続く第4話は、自分の殻にこもり図書室にしか居場所を見つけられない少女が、主人公と知り合ったことをきっかけに成長していく物語。

 この本のなかではいちばん重い話だろう。いまでも自分の殻にこもっているぼくにしてみれば他人事ではない。興味深く読めた。

 しかし、この没個性な主人公を狂言まわしにして少女たちの内面を語っていくスタイルは、小説版「センチメンタルグラフィティ」に似ているなあ。ぼくはあの作品もわりと好きだった。

 第5話は――えーと、ノーコメント。最近はこの手の電波キャラが流行っているのかなあ。むかしからいたような気もするけれど。

 今回は5人のヒロインが「初恋成就戦争」(このネーミングはどうよ?)に「参戦」を決めるところで終わっているので、ひょっとしたら続編があるかも。

 ただ、続編はハーレムものにしかなりようがないと思うので、ここで終わってくれたほうが切りはいいかな。ゲームと違って5人全員の恋を叶えるわけにはいかないのが辛いところです。