クイックハルト

クイックハルト

 なんでも書いてみるものである。

 ぼくにも献本してくれしてくれとさわいでいたら、本当に献本の話が来た。郁雄/吉武さん(スラッシュは誤記に非ず)の「クイックハルト」。

 いま、ぼくはその本を読みながらこの文章を書いている(「黒死館」はどうした)。

 これまでのところ、それなりにおもしろい。が、こう書いても、それは信用できないぞ、と思われる方もいらっしゃるかもしれない。献本してもらったものだから手心を加えているかもしれない、と。

 先日も一部サイトで話題になっていたことだが、ただで本をもらうとなると、書評の公正性が保たれるのかという問題が生じる――と、かんがえるひともいるようである。

 ぼくはそれほど大袈裟なことだとは思わない。献本なんて出版業界ではそれほどめずらしいことでもない。広く活動している作家や評論家のところには相当数の献本が寄せられているはずである。

 たとえば、作家の瀬名秀明さんのブログを見ると、読みきれないほど多数の本が贈られてきていることがわかる。

 仮に瀬名さんがそのうちの一冊を取り上げ、なにか言ったとして、まさかただで進呈された本だから意見を曲げたと思うひとはいないだろう。いくらなんでも人ひとり買収するのに本一冊では安すぎる。

 さらに言うのなら、そもそも、この日記の書評が厳正中立である保証など、最初からなにもないのである。

 献本なんて話がなくても、ぼくは知人の作品を贔屓するかもしれないし、あるいはきらいな作家には不当な評価を下すかもしれない。おまけにその批評能力はとても怪しい。

 この日記の信頼度は、はじめからそのようなさまざまな要素が絡み合って決まってくるものなのだ。

 ふだんからぼくが書く書評を利用してくださっている方は、それらの要素を総合的に判断して、「まあ、とりあえず信頼してみてもいいかな」と思われた方なのだろう。

 ぎゃくに、「こいつのいうことは全然あてにならない」と思って去っていった方もいるはずだ。それはそれで、ざんねんではあるが、仕方のないことである。ぼくも他人の書評を利用するときは、そうやって判断している。

 今回の件は、その判断基準に「献本」という新要素が加わっただけのことである。id:kaienは献本されたから遠慮して本音を書けなかったのだろう、と思われる方は、その要素を考慮にいれて判断してくれればいいだけのことだ。

 もちろん、ぼくは、みだりに自分の意見を曲げたりはしない、と主張する。しかし、その主張がどこまで正しいのかは、個々人で判断してもらうよりほかにないということである。

 これまでもそうだったし、これからもそうだ。だから、献本を受けて、多少信頼度に揺らぎが生じたとしても、なんの問題もない。

 というわけで、「Something Orange」では今後も献本を受けつけています。だれかください。いや、ほんとに。ほら、ただより安いものはない、って、ことわざにも言うことでもあるし。