このほど映画化されることが決まった村山由佳の第一長編、その漫画版。

 この作品は村山の代表作でもあり、その売り上げは累計100万部をこえるという。当然、熱烈な愛読者も多いので、へたに処理すれば非難轟々となるところだ。しかし、池谷理香子は非常にうまく原作を捉えて漫画化していると思う。

 絵柄は好みがわかれるところだろうが、ちょっとこれ以上望めないくらい巧みに原作のエッセンスを掴んでいる。原作ファンでも安心して読める作品だろう。

 ただ、ぼくは村山作品のなかではそれほどこの作品を買わない。甘く、苦く、切なく、哀しく――そして、それだけだ、と感じるからである。

 村山由佳の小説の特徴である激しい情熱は、たしかに既にここに見られるものの、十分に成熟しているとはいいがたい。しかし、同時にだからこそベストセラーになったのかもしれない。

 おそらく「天使の卵」は、村山由佳の全作品のなかでも最も読者を選ばない作品だ。村山作品のもうひとつの特徴であるピュアな愛情表現が、多くの読者を惹きつけたのだろう。

 未読の読者はこの漫画から読みはじめるのもいいかもしれない。原作には既に続編「天使の梯子」が上梓されている。ここから入って、そこへすすんでいくのも、よい読書経験となるのではないだろうか。

 第一作にはその作家のすべてがあるといわれる。ぼくはかならずしもその俗言を信じるものではないが、しかし、村山由佳の場合は、どうやらそれは真実だといえそうだ。