青春俳句講座 初桜

青春俳句講座 初桜

 第9回角川学園小説大賞優秀賞受賞作。

 若き天才俳人とその弟子の女子高生が「日常の謎」に挑む連作短編集である。

 と、こう書くとたぶん誰でも北村薫の円紫ものを連想することと思う。実際に読んでみてもその印象は変わらない。どこからどう見ても北村作品へのオマージュとしか思えないのである*1

 しかし、ざんねんながら作家としての技量は先人に及ばない。まあ、北村薫と比べるのはさすがに可哀想だとしても、稚拙な個所が散見されることは否めない。冒頭からしてこうである。

 五月の風が、私のセーラー服を駈け抜けていった。
 市街地の外れにある、祇園坂というゆるい坂道の上である。
 柔らかく暖かく吹くなかに、頬に残る引きしまるものがある。まだ春だ――と思う。もう闌(たけなわ)だ――とも想う。

 なにが残るのやら、引きしまるのやら、意味がわからない。

 好みをいうなら、「思う」と「想う」を使いわけているあたりも、少し恣意的に過ぎる印象を受ける。あざとく、わざとらしい、と思えてしまうのである。

 一方、ミステリとしての出来はまずまず、といったところだろうか。構成に難があることは事実だが、まあこんなものか、という気もする。

 一本の小説として見るといかにも地味だが、初々しいという見方もできるだろう。あとは次回作の出来しだいである。ぜひこの作品を超える第二作をものしてもらいたいものだ。

*1:文章を読むかぎりなんとなく京極夏彦っぽいんだけれども。