その1 産むべきか、産まざるべきか


 妊娠中絶について考えています。いや、違う、べつに恋人を妊娠させてしまったわけではありません。あくまで社会問題、あるいは倫理的問題としての中絶について考えているのです。

 きっかけはmixiのあるトピックでした。それは友人が妊娠中絶を考えているというある女性が作ったトピックで、その友人をどう励ませばいいのかと訊ねていました。そして、そこに寄せられた反響はそのほとんどが中絶に反対するものだったのです。

 曰く、中絶は殺人である。曰く、いのちより大切なものはない。曰く、こどものためを思えば学校を中退するくらいなんでもないはず。さまざまなことばで中絶を否定する意見が寄せられていました。

 ひとつひとつの内容はわからなくもないものなのですが、とにかくここまで圧倒的に中絶反対派が多いとは思っていませんでした。

 現在、日本では年間30万件以上の中絶手術が行われているといわれています。中絶に対する抵抗感はそれほど大きくないのではないかというのがぼくの予想でした。結果としてはそれは大はずれだったわけです。

 まあ、mixiに集まる意見が社会を代表しているとも思わないけれど、その後Googleにお伺いを立ててみたところ、やはり中絶反対派の声は大きいと思わざるをえませんでした。

 このことについて印象にのこっている出来事があります。大学時代、ぼくは女性学の講義を取っていたのですが、そこで妊娠中絶についてディスカッションすることになったのです。

 お題はもし自分、ないし自分の恋人が妊娠したとしたらどうするか、ということでした。何人かのグループで話しあったところ、その場のいた数名の女性全員が「堕ろす」と答えました。

 ぼくは意外に思いました。少なくともひとりかふたりは「産む」とこたえるひとがいるものと思っていたからです。

 しかし、すぐに考えなおしました。ぼくの通っていた大学は都内の有名私立大学です。べつにたいして偏差値の高い大学ではないけれど、その名前をあげれば知らないひとはいない学校であることは間違いない。

 きっと彼女たちも入学のためにそれなりの努力をしてきたはずだし、お金もかかっている。しかし、妊娠出産ということになれば、どうしても退学しなければならない可能性が高い。

 彼女たちが妊娠によってキャリアを捨てたくないと考えることは、考えてみればむしろ当然のことでした(当然だと思わないひともいるだろうけれどね)。

 そしてまた、産むとこたえるものと思い込んでいたぼくの心に、女性のキャリアを軽く観る視点がなかったとはいえません。ぼくは自分の態度を反省し、この結果をこころに刻みました。

 しかし、mixiのトピックに寄せられた書き込みを見ると、女性でも中絶に反対するひとは非常に多いようです。自分は学生でこどもを産んだけれど、それでよかったと思っている、といった書き込みも多かった(ちなみに該当トピックは既に削除されている)。

 このことについてどのように捉えるべきでしょうか。いろいろと反響が予想される、めんどうな話題ではありますが、ちょっと考えていってみたいと思います。