- 作者: 玄鉄絢
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2006/04/19
- メディア: コミック
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「少女セクト」完結編。
第1巻では一話につきひと組のカップルを描くオムニバス・スタイルが採られていたが、この巻では藩田思信(これで「しのぶ」と読む)と内藤桃子の関係を中心にほぼ一貫した物語を綴っている。
第1巻は思信が桃子に告白するところで終わっているので、この巻の物語はその続きにあたる。結論からいうと、非常におもしろかった。名作傑作というほどのものでもないが、このジャンルが好きなひとなら読んでみて損はないと思う。
まず本としての造作が豪華だし、内容も品よくまとまっている(エロ漫画なのにね)。ジャンル的制約から一階に一度は濡れ場があるのだが、ごく上品に描かれているので、そうとう潔癖なひとでないかぎり不快感は抱かないのではないだろうか。
少なくともアニメ版「ストロベリー・パニック」よりは(以下略)。18禁マークはついていないので、未成年のひとも安心して買ってください。ちなみにこの巻には一応、男性キャラが登場する。1コマだけだし、名もない端役だけれど。
弱点としては、あいかわらず物語が弱いことがあげられるだろう。今回は思信と桃子のふたりに焦点が絞られているので、前巻に比べると格段にわかりやすいのだが、それでも問題点は少なくない。
あの先生が急に病気になってしまうところとか、ご都合主義だよなあ。また人物の錯綜ぶりも相当のもので、ぼくはさいごまで読んでから第1巻を読み返してみて、ようやく登場人物の全体的な関係が把握できた。
全2巻に20人を超えるキャラクターが出てきてからみ合うのは良いのだが、できれば人物相関図をつけてほしかったかな。
このことにかんしてはここの「「絵が綺麗なので買ってきて読んでみたら元ネタを知らないのでキャラがどうしてこんなことをしているのか良くわからないけれどシチュエーションだけでも萌えるので満足」というような状態」との表現が言いえて妙だと思う。そうそう、そんな感じ。
ひとりひとりのキャラクターは魅力的なのだが、ほとんど内面的に掘り下げられないのでどうしても物足りない印象がのこる。いいかたを変えるなら、作者がもっているらしいキャラクターの情報が読者と共有されていないのだ。
「このキャラクターはこういうひとだよ」という説明が足りない。作者がかなり詳細にキャラクターを作りこんでいることはわかるものの、物語のなかでそれを表現しきれているかというと疑問がのこる。だからどうしても同人誌的な印象になってしまう。次があるなら、そこを改善してほしいところ。
それにしてもこの漫画、キス魔ばっかりだな。こんなに丁寧なキスシーンが多いエロ漫画も少ないんじゃないか。このキスシーンがまた綺麗なんだけれどね。
総合的にみると、このジャンルが好きなひとにはおすすめできるレベルの作品。うん、良い漫画でした。