ここにひとりの作家がいるとする。

 作家じゃなく、漫画家でも、画家でも、音楽家でもいいんだけれど、まあ、ここは書評サイトなんで作家ということにしておこう。

 その作家の作品はきわだった難解さで知られている。しかし数少ない読者の評価はきわめて高く、みな口をそろえて絶賛している。

 そしてあなたがその作家の本を読んだとする。そしてさっぱりよさがわからなかったとする。そんなとき、あなたが次に採る行動は、おおまかに分けて以下のふた通りが考えられると思う。

 1.しょせんひとのいうことはあてにならん、その作家の本は以後読まない。
 2.よくわからんがひとが褒めているんだから凄いんだろう、続けて読んでみる。

 もちろんどちらが正しいという問題じゃない。どちらを選ぶのもあなたの勝手だ。ただ、ぼくとしては「2」の選択肢も悪くないよ、といいたい。

 「1」には他人の評価よりも自分の意志を優先する凛々しさがある。ひとの意見にまどわされず独立独歩、偉いものです。それに比べると「2」は権威主義的な気がしなくもない。

 でも、そのときさっぱりわからないと思った作品が、「わかろう」と思って読んでいくうちに、わかるようになってくることも決してめずらしいことじゃない。

 そして、そういう選択はあなたの世界を広げていく。「いまの自分」の価値観にこだわる必要はないのだ。ぼくはそう思いますね。