ついさきほど、チャットを終えて、「週刊少年ジャンプ」を買いに近所のセブンイレブンへ出かけた。当然ながら、売っていなかった。ゴールデンウィークの休刊である。

 「ちぇっ。デスノ終わらせてから休めよ」などと不条理な文句をつけながら外へ出たその帰り道、ひと組の男女が自動車の扉のあたりでもつれあっているのが目に入った。

 遠くから見ると、女性がくるまのなかへ押しこまれているように見えた。まさか、連れ去り事件だろうか。これは止めなきゃだめでしょう。

 そう思って近づいていくと、その男女の怒鳴り声がきこえてくた。ひとの姿もろくに見当たらぬ早朝とはいえ、聞くに耐えない激しい罵りあいである。

 しかし、そうやって近づいてみると、ぼくの推測は間違えていたことがわかった。どうも車のなかに乗り込もうとしているのは女性のほうで、むしろ男性のほうが彼女を外に放り出そうとしているようなのである。

 「帰れよ!」「やだ!」などといいあらそっているのがわかる。どうも誘拐事件の現場などではなく、たんなるありふれた愁嘆場らしい。一応、「なにをしているんですか」と声をかけてみたものの、ののしりあうふたりの耳には入らないようで、無視されてしまった。

 どうやら犬も食わないというやつらしいし、暴力がふるわれている様子もない。警察に通報するほどのことでもないだろう。まあ、あれですね、リアル「だめんず・うぉーかー」?

 ぼくはばかばかしくなってその場を離れた。筋違いの安っぽい思い込みは空回りして、まぬけな結末に終わったわけである。

 髪を染め、派手な恰好をしたこのカップル(だろう、たぶん)は、外見だけ見ると典型的な「いまどきの若者」に見えた。また、言葉遣いの下品さも、ひと目もあるところで愁嘆場を演じる非常識さもうんざりさせられるようなものだった。

 DQN同士の見苦しい痴話げんかといえなくもない。あるいはぼくがもう少し歳をとっていたら、「まったく、最近の若者ときたら」と嘆いたかもしれない。

 しかし、ぼくはこうも思う。ぼくはこのふたりの事情をなにも知らない。ここにいたるまでにどんな物語があったのかを知らない。だから朝もはやくから迷惑だなあ、と思うが、すべてを知っていたらまた違う見方があったかもしれない、と。

 もちろん知っていたらなおさら呆れたかもしれないが、すくなくともかれらについてなにかを決めつける権利はぼくにはない。だれかに決めつけられるのがいやなら、まず自分が決めつけるのをやめるべきだろう。青くさい言い草かもしれないが、ぼくはそう思う。

 しかしまあ、はた迷惑な出来事ではあった。夜の街にはいろいろな事件が転がっていて、ぼくは以前、事故を起こした外国人女性に頼まれて、彼女のかわりに110番をかけたこともある。世の中、なんでもありである。でも、まあ、いいか。もういいかげん寝よ、寝よ。

 それでは、おやすみなさい。ぐー。