そういう意味で、いま関心を寄せているが、田仲芳樹「アルスラーン戦記」で最終的な悪役と設定されている蛇王ザッハークだ。

 第1巻の時点から登場が予告されているキャラクターなのだが(ちなみに元ネタはペルシャ神話)、次の巻あたりで遂に復活を遂げるはずなのである。

 この魔王が物語に登場した時点で、どのように描写されることになるのか、ぼくは非常に興味がある。はたしてザッハークは内面をもった人間として描かれるのだろうか。それとも、そういった次元を超越した絶対悪として描写されるのだろうか。

 奇しくもこの物語の第2巻で策士ナルサスが「喋るものは恐ろしくない」と語る場面がある。ここを読んだだけでも、田中芳樹が言葉と内面の関係性を熟知していることがわかる。

 だから、かれはきっと本当にザッハークを恐るべき悪の魔王として描ききるためには喋らせてはいけないということをわかっていると思う。もし喋らせてしまったら、ザッハークもたんなる強力な悪人のひとりに成り下がってしまう。

 しかし、わかっていてなお、かれはザッハークに喋らせるだろうとぼくは思っている。人間の理解を越えた、抽象的な悪と言うものを、この作家は描かない気がするのだ。

 しかしまあ、じっさいどうなるかは続刊を読んでみないことにはわからない。そういった理由でも、ぼくは「アルスラーン戦記」の新刊を待ち望んでやまないのである。