あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

 今月は本当にライトノベルしか読まなかったなあ。名作月間などといって味の濃い作品ばかり読みあさった先月の反動が来たのかも。来月はもうすこし真面目に読書しよう。

 というわけで、「フェアリイ・ランド」は放り出したまま、ロアルド・ダールを読みはじめた。「あなたに似た人」、ダールの著書のなかでもとびきり有名なもののひとつで、十五作の短編が収録されている。

 ぼくは、短編集を読むとき、まえから順序よく読むということをしないひとである。たいていいちばん読みやすそうなものから手を出す。今回は巻頭作の「味」だった。ワインの利き酒に家と娘を賭けてしまう男たちの物語だ。

 高まるサスペンス、意外な結末、そしてワインにかんするいやみったらしくも衒学的な薀蓄がいい。どの世界でもマニアはいやみなものだ。うむ、おもしろかったぞよ。

 続いて本書の最高傑作と解説にある「南から来た男」に手をのばす。「味」とおなじ賭け事小説で、ある若者が南から来た老人と小指を賭けて勝負する。「ミステリマガジン」のオールタイムベスト投票では、短篇部門で堂々の第1位を獲得したという。

 まあ、いくら世評が高くても合わない作品はあるものだが、これは噂に違わぬ傑作であった。したたるような悪意にみちた、なんともいえず不気味な短篇だ。よくもまあこんな話を思いつくもの。ダールというひとは、よほど厭な性格だったに違いない。