図書館戦争

図書館戦争

 メディア良化法。公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まるために昭和最後の年に制定されたその法律は、事実上、表現の検閲を可能にしていた。これに対し、その猛威に対抗することを期待されて成立したのが「図書館の自由法」である。

 このふたつの法律は、メディア良化法委員会と図書館隊の武装対立という、まったくあたらしい現実を生み出した。表現の自由と検閲を巡る「図書館戦争」の始まりであった――。

 有川浩待望の第四長編は、怪獣ものから離れた近未来軍事小説。いままでのようなSFでこそないが、話の根幹となるアイディアは前3作以上に荒唐無稽である。

 はじめにタイトルを目にしたときには、「図書館戦争」とは比喩表現だろうと思っていたが、まさかほんとに図書館が軍隊をもって戦争していようとは。いや、ほんと、こういう発想ってどこから出てくるんでしょうね。

 その物語は作者曰く「月9連ドラ風」。図書館隊に入隊した女性が訓練のなかで成長していくさまをすがすがしく綴っている。みえみえの落ちがいかにも有川浩

 ただ、物語の主軸があくまでも主人公を中心とする軍隊内のドラマにあって、表現の自由をめぐる議論が薄い点はやや物足りなかった。

 この作品では検閲側の描写が戯画的な水準にとどまってしまっているが、じっさいこのような社会になった場合、もっと複雑な議論がくりひろげられるのではないだろうか。

 痛快娯楽小説としては文句なしにおもしろいのだが、さらにもうひと味ほしいところか。