玉響荘のユーウツ (トクマ・ノベルズ Edge)

玉響荘のユーウツ (トクマ・ノベルズ Edge)

 メイド喫茶の売上金を持ち逃げされ、借金まみれになった主人公は、4日後の正午までに金を作れなければ手足の指を切り落とされる羽目に陥る。

 そんなとき、期せずして幸運が舞い込んでくる。亡くなった祖母が遺産として古ぼけたアパートを遺してくれたのだ。この土地と建物を売りさばけば借金を完済できる!

 そのためには現在の住民たちを立ち退いてもらわなければならない。かれらは立ち退きの代償としてにさまざまな無理難題を持ち出してくるのだったが――。

 以前、id:trivialさんがめずらしくべた褒めしていたので読んでみた作品。なかなかおもしろかった。

 この設定で「いろいろ頑張りましたが、結局すべて無駄に終わり、指を切られてしまいました。おしまい」などという展開になるはずもなく、結末はハッピーエンド。しかしそこに至るまでの展開はあれこれ工夫されている。

 ただ、id:mmmichyさんが書いているように、かなりご都合主義的な展開ではある。だれかが主人公の行く先々に解決のヒントをばら撒いているんじゃないかという気さえする。

 そもそも借金で首がまわらなくなった途端に遺産が転がり込んでくるところからして、都合のよすぎる展開といえなくもないしね。

 しかしまあ、この種のコメディでそこを突っ込むのは野暮というものなのだろう。素直にそういうものだと呑み込んで愉しめば良い。

 とはいえ、いまひとつ印象が弱いのはたしかで、なにかもうひと味、スパイスがほしいところだと思う。非常にこなれた作品ではあるのだが。

 わがままな要求は読者の特権である。