mixiマイケル・ムアコックコミュニティによる情報によると、「メルニボネの皇子」は井辻朱実による新訳で読めるらしい。これで「エルリック・サーガ」全巻は井辻訳で統一されることになる。

 嬉しいことは嬉しいのだけれど、安田均の名訳が葬られることになるのは残念だ。もともと、「エルリック・サーガ」は全作品を安田均が訳す予定だったらしい。

 ところが、安田さんはゲームにはまってしまってそれどころではなくなり、井辻さんのもとにお鉢がまわって来た――ということを、井辻さんがどこかで書いていた。

 もちろん井辻さんの翻訳も素晴らしく美しいのだが、安田訳には井辻訳とはまた違う独特の硬質な魅力があり、これはこれで捨てがたい。

 じっさい、いま読んでも、官能的でありながら緊張感をたたえた安田訳の美しさはこたえられないものがある。ただのモンコレ名人ではないのである。

 きのう書いたとおり、ぼくが「メルニボネの皇子」を手にとったのは中学生のころ。「メルニボネの皇子」とそのあとの巻を読みくらべることによって、ぼくは初めて「おなじ文章でも翻訳によって微妙に印象が異なってくる」ということを学んだ。

 そしてそのあと井辻朱実訳の文章をもとめて、フィリス・アイゼンシュタインの「妖魔の騎士」やR・A・マカヴォイの「魔法の歌」などのファンタジー小説を読みあさることになった。

 そういう意味でも、「エルリック・サーガ」ぼくにとって重要な本であるといえる。ああ、新訳が待ち遠しい。