1リットルの涙 (バーズコミックススペシャル)

1リットルの涙 (バーズコミックススペシャル)

 読了。

 紺野キタには、以前から注目していた。

 商業誌へのデビュー作である「ひみつの階段」のころから、彼女の作品には目を惹くものがあった。

 あまいあまい御伽噺のようなお話ではあったけれど、その底にはたしかな確信のようなものがあり、それが作品を感傷から救っていたように思う。

 「ひみつの階段」は女子校を舞台に女生徒たちの交流を描いた作品だったから、紺野はそのころ流行り始めていたガールズ・ラブ系の作家とみなされることも多かった。

 じっさい、そのジャンルの専門誌である「百合姉妹」に何作かハイレベルな作品を掲載してもいる。そしてまた、ボーイズ・ラブ系の作品も物している。

 しかし、じっさいの彼女の作風は、そういった扇情的なことばのイメージからはほど遠い、しっとりとおちついたものである。

 本書「1リットルの涙」でもそれは変わらない。若くして世を去った女性の闘病記と聞くと、いかにも涙なみだのお話が思い浮かぶ。

 だが、紺野はこの物語を紡ぎだすにあたって、ただ悲劇を強調するばかりの方法を採らなかった。

 ここにあるものは、あるひとりの少女の、切実な葛藤の物語である。しかし、それは決してたんなるセンチメンタリズムにとどまらない。」

 死をまえにして、浮かび上がる生の鼓動。不自由を得て知る、ひとのあたたかみ。紺野キタは、そういったむしろ地味な真実を、やわらかい線で謳いあげる。

 注目の作家の、注目に値する新作である。