摩天楼の怪人 (創元クライム・クラブ)

摩天楼の怪人 (創元クライム・クラブ)

 読了。

 島田荘司は、やはり島田荘司でした。

 御手洗もの久々の長編は、「占星術殺人事件」や「異邦の騎士」よりさらに時をさかのぼる御手洗潔最初期の事件。

 幻想的な謎と合理的な解決の波状攻撃で、これでもかというほど島田ミステリの醍醐味を味わわせてくれます。

 ヒエログリフでのこされた暗号、高層ビルの窓の外にあらわれる怪物、密室殺人、地下都市、なぞの「ライオン大通り」――と、素材は島田荘司お得意の異様なものばかり。

 「水晶のピラミッド」や「アトポス」を読んできた読者ならにやりとするところでしょう。よくもまあ、たった一冊にここまでのミステリを詰め込むものです。

 時計塔ビルディングでの殺人事件は、綾辻行人時計館の殺人」や北山猛邦「クロック城殺人事件」を連想させますが、島田流の解決方法はさすがにスケールが大きく、先行作品を部分的にしのいでいます。

 作品ごとに出来不出来はあるにせよ、ここまで壮大な作品を毎年毎年発表してくる才能はやはり稀有というしかありません。

 島田荘司ひとりがいなければ、日本のミステリの地図はまったく違った地形を描いていたでしょう。

 あえて文句をつけるなら、島田流奇想ミステリの弱点として、解決編がやや弱い気がします。いちおう伏線はしかれているのだけれど、これはわからないよなあ。

 でも、それ以外は文句なし。奇想と豪腕に圧倒される力作です。ただまあ、ハードカバーは高価なので、文庫になるのを待ってもいい気はしますね。