東京DOLL

東京DOLL

 読了。

 直木賞を受賞してからも速度を緩めず疾走しつづける石田衣良の最新長編は、ミリオンヒットを連発しつづける天才ゲームデザイナー、MG(マスター・オブ・ゲーム)と彼の「人形」ヨリの物語。

 背中に彫ったタトゥーもふくめて完璧な肉体をもつ少女と、そのイメージを画面のなかに閉じ込めようとするアーティストの相克を綴った、現代のピグマリオン神話である。

 いままでの石田は社会の下層で生きる人びとを主役に据えることが多かった。限界まで追いつめられた人男女の姿を活写した「LAST」はその極北といえるだろうし、代表作「池袋ウエストゲートパーク」でもいつも弱いものたちが視線の中心に据えられていた。

 しかしこの「東京DOLL」の主人公MGは、数少ない成功者の椅子に座ることを赦されたひとりである。それにもかかわらず彼はどうしようもない空虚を抱えている。どれほど成功を重ねても埋められない空白、それがこの小説のテーマだ。

 サクセスとは縁のない大半の読者には、MGの孤独はあまりにも遠く感じられるかもしれない。だが、石田はそれを承知のうえでこの小説を書いたのだと思う。あらゆるひとを対等に観察するその視線はやはり鋭いものがある。

 結果的に生まれた物語はある意味で凡庸だが、そのスタイルは(かぎりなく気障ではあるものの)クール。石田衣良はけっきょく、ストーリーテラーである以上にスタイリストなのだと思う。

 それにしても、この表紙は素晴らしいですね。