ヨットクラブ (晶文社ミステリ)

ヨットクラブ (晶文社ミステリ)

 石野さんがベタ褒めしていたので、デイヴィッド・イーリイ「ヨットクラブ」を読み始める。おもしろいのは「ヨットクラブ」と「タイムアウト」だけということなので、それだけ読んでみる。

 うっかり「貝殻を集める女」も読んでしまったのだが、めちゃくちゃ普通の心理小説。やっぱり読まなくてもよかったかも。

 「ヨットクラブ」は、ある男が高い社会的地位をもつ人間しか入れないある会員制クラブに入ろうとして――というところから始まって、どうしようもなくばかばかしい結末へと疾走していく短編。最後の3行で思わず爆笑。ここに落とすか、イーリイ。

 対する「タイムアウト」は、設定を話すことじたいネタバレ的な中篇。ボルヘス的というか、「伝奇集」にこっそり紛れこんでいそうなお話ではあるんだけれど、発想のばかばかしさはちょっと比類ないかも。

 バカSFの傑作といわれることもあるようですが、これはバカSFというよりむしろボケSFではないだろうか。たぶんこれを読むとだれでもツッコミをいれたくなる。そんなわけないだろ!とか、「鎮静剤をどうぞ」じゃないだろ!とか。

 アイディアの根幹部分におもいっきり穴があいているんだけれど、その穴を無視して平気ですすんでいくあほらしさが素晴らしい。いや、でも、やっぱりそれはおかしいだろ! できるわけないって! 気づけよ! 

 奥のほうに歴史にかんする真摯な考察が秘められているような気もするのだが、ただの勘違いかもしれない。勘違いだろう、きっと。