読了。

 ――とうとう、第1巻から第27巻まで読みあげてしまった。こんなにまとめて漫画を読んだのは「ダービージョッキー」全22巻(名作)以来。はっきりいってめちゃくちゃたのしい漫画体験だった。

 この作家の存在を教えてくれたV林田さんにはいくら感謝してもしたりない。この世界にまだこんなに豊かな漫画フロンティアがのこされていたとは。きょうばかりは自分の無知を認めないわけにはいかないよ(しみじみ)。

 感慨に耽ってばかりいてもしかたないので、作品のことを書いていこう。オヤジセンス全開のダジャレタイトルからわかるとおり、「週刊漫画ゴラク」連載のオヤジ漫画である。

 かつて伝説の名シェフとよばれた主人公が、ダメダメな料理で経営危機に瀕している料理店に乗り込んでいっては、その店の店主に荒修行を化して店を再建し、去っていくというお話。いわば「愛の貧乏脱出大作戦*1の漫画版ですね。

 設定だけをみれば「ザ・シェフ」とちょっと似ているけれど、じっさいに読んだ印象は正反対。わりとクールな「ザ・シェフ」に対し、「食キング」ではそれはもう血湧き肉踊る料理バトルがくりひろげられる。

 具体的にどのような内容なのかはここらへんを参照してもらえばわかるだろう。その奇想は奈須きのこ西尾維新も目じゃない大迫力。「新伝綺だせえよ」とか「リアル・フィクションもう飽きた」などと思っているひとにこそ読んでもらいたい作品だ。

 また、はじめは料理とは無関係にみえた修行がやがて店の再建へとつながっていく伏線の妙は本格推理に近いものがある。そういう意味では脱本格作品の一種ともいえるだろう。卓球とか按摩はまだしも、サーカスの投げナイフまで修行に取り込んでしまう展開には法月綸太郎もびっくりだ。

 ちなみに途中で新潟市が舞台となる話があって、地元民としてはちょっと嬉しかったりしたんだけど、そのときの料理は「米のケーキ」。いやあ、それはどうだろ。

 まあ、こう書いてくといかにも色物みたいだし、じっさい色物なんだけれど、真面目な話、漫画としての完成度はかなり高いんじゃないかと思う。

 とにかく読みはじめるとやめられなくなるひきの強さがある。ついつい27冊も読みあげてしまった僕がいうんだからまちがいない。なんというか、地に足のついたおもしろさなのだ。

 その意味では、やれ萌えだのやれ新伝綺だのといった浮かれさわぎとは対照的。それはもちろんウエダハジメとか西島大介といった最先端の漫画家たちはそれはそれで凄いけれど、表現が先鋭化しすぎていて読んでいると疲れる。それに対してこの漫画はすらすらいくらでも読むことができるのだ。

 「ファウスト」の編集部もいまのうちに土山しげるを確保しておくべきだろう。この作家には「喰いしん坊」というフードファイトものの作品もあって、そちらも素晴らしいのだが、その話はいずれ。

*1:みのもんた司会のテレビ番組。傾きかけた店の店主を一流料理店で修行させ、店を再建するという内容。