日本怪奇小説傑作集1 (創元推理文庫)

日本怪奇小説傑作集1 (創元推理文庫)

 読了。

 怪奇小説は苦手だ。スティーヴン・キングやクーンツなどモダンホラーは一応読んでいるが、ラヴクラフトあたりにはどうも手がでない。

 怪奇小説の特色は、近代的な「理」に背をむけ、不条理そのものの悦楽に耽溺するところにある。どんな凶悪な怪物でも、幽霊だ、吸血鬼だ、狼男だと正体が判明したら「ただの怪物」にすぎない。

 だから優れた怪奇作家は、不条理を不条理のままに差し出す。血にぬれた青ざめた手で。その不気味な読後感が苦手なのだ。

 というわけで、このアンソロジーに収められた作品はほとんど初読だった。読む前は全て未読だと思っていたのだが、川端康成「慰霊歌」はどうも読んだ記憶がある。ちょいと古めかしいサイキック・ホラーで、なかなかおもしろい。

 この本には川端のほかにも森鴎外夏目漱石内田百間芥川龍之介川端康成ら近代日本文学を支えた文豪たちの名前がならんでいる。そしてまた、江戸川乱歩岡本綺堂夢野久作大佛次郎ら大衆小説の巨星たちの名前もあがっている。

 ここ百年の最も優れた作家たちが、文学、非文学のボーダーを越えてならぶ目次は圧巻だ。だからこそ苦手な怪奇小説にも手をだしてみようと思ったのだが、読んでみるとこれはこれで味がある。食わず嫌いだったのかもしれない。

 僕は夭折の天才作家村山槐多の「悪魔の舌」が気にいった。この本の収録作では、あるいは最も平凡なホラーかもしれないが、ぬめるような文体がたまらない。この人の本をもっと読んでみよう。そのほかには小泉八雲「茶碗の中」が印象深い。