柳生忍法帖・上 (講談社ノベルス)

柳生忍法帖・上 (講談社ノベルス)

柳生忍法帖・下 (講談社ノベルス)

柳生忍法帖・下 (講談社ノベルス)

 読了。

 既に二、三度は通読しているはずだが、また読みかえしてしまった。なんど読みかえしてみても、傑作との確信は揺らがない。再読三読に耐えてこそ名作とはよくいわれるが、その意味ではまさにこの作品は名作中の名作といえるだろう。

 同様に剣客柳生十兵衛が孤剣、修羅のたたかいにいどむ「魔界転生」と、どちらが上かは意見がわかれるところだが、とにかく二作あわせて忍法帖のなかでも双璧を成す傑作であることは間違いない。

 まず日本のチャンバラ小説で、いや、漫画も映画も含めてさえ、これよりおもしろいものはめったにないはずだ。

 今回、あらためて感心したのは、十兵衛を窮地から脱出させる方法の周到さである。以前にも書いたことだが、この物語のなかで、十兵衛と女たちは数々の危地に追い込まれる。そこからのトリッキーな脱出方法は、ほとんど推理小説のトリックに近い。

 山田風太郎は推理作家としても歴史に名をのこす達人だが、その経験が大いにここで活かされている。

 そしてひとたび危地から抜け出すや、柳生十兵衛の独壇場である。いま「Y十M」でかたられているあたりでは堀の女たちが前面に出ているが、後半は一貫して十兵衛の活躍がつづく。これでもかというほど名場面、名ぜりふのオンパレード。

 そして、七人の堀の女たちに続くもう一人のヒロインが登場するのだが、これが――いやいや、あまり書きすぎてもまずいか。さて、「Y十M」がここに辿り付くまでにはあと何年かかるものやら。何年でも待つぞ。