クイック・ジャパン (Vol.62)

クイック・ジャパン (Vol.62)

 「クイック・ジャパン」のあだち充インタビューがおもしろかった。

 あだち充は、いうまでもなく現在の少年漫画界の第一人者である。「タッチ」「H2」のようなスーパーヒット作から、「いつも美空」のようなライトなコメディまで、とにかく外れの少ない作風で知られる。

 生涯売り上げ部数は既に2億作近くに到達しているとか。100万部の作品を200冊ぶん生み出さなければならない計算になるわけで、素人考えにもとんでもない偉業であることがわかる。

 しかし、そのためにあだち充が採った方法は決して「がちがちのヒット狙い」ではない。むしろかれのやりかたは業界でも異端に属するだろう。どこまでも力みのない、読者の予想を軽がると外していくスタイル。

 ふつうに考えれば、もっとインパクトの強い作品におしのけられて、「玄人好み」というあたりに評価が落ち着きそうなものだが、どういうわけかベストセラー連発。その秘密は「自分でもよくわからない」らしい。

 インタビュアーの質問に気軽にこたえるそのことばからは、作風同様のひょうひょうとした人柄が窺い知れる。そのうちにインタビュアーも「あだち充は過小評価されてきたのではないか」と考える。そう、これはこれで、やはり一種の天才とみるべきなのだろう。

 あだち充の線は、歳をとるほどに優雅に洗練されていく。いまの目でみると、「タッチ」の頃の線すら多少野暮ったくみえる。ということは、かれの描線の絶頂期はこのさらに先にあるのかもしれない。一読者はただ楽しみに待つばかり。