円環少女 (角川スニーカー文庫)

円環少女 (角川スニーカー文庫)

 読了。

 その世界は、そのほかの幾千の世界で〈地獄〉と呼ばれていた。その世界に住む〈悪鬼(デーモン〉たちは、本来あたりまえに存在する自然現象であるはずの〈魔法〉を、ただ観測するだけで消去してしまうからだ。

 元の世界で犯した罪のためにこの地に墜とされた少女メイゼルは、その世界、地球で、過去だれも達成したことがない敵対魔導師100人狩りに挑戦する。

 彼女のパートナーは〈沈黙〉の異名を採る男、武原仁。〈鮮血公主〉をなのる魔導師や、12人の神聖騎士たちを敵にまわして、ふたりの壮絶なたたかいが始まる。

 と、こう書いても意味がつかめないかもしれませんが、本文を読んでもよくわからない部分がのこるくらいなので、我慢してください。結局、メイゼルの罪ってなんだったんだろうなあ。第2巻以降の伏線なのだろうか。

 とにかくまあ、これほど読むのに手間取るライトノベルもめずらしい。過去の名作に頼らないオリジナルな魔法理論を組み立てたところまでは良いのだが、その解説がいまひとつ客観性を欠くものだから、繰り返し読んでも意味がはっきりしない文章が頻出することになる。

 作者が理解しているものを読者にも理解させようとする、そのプロセスに、どうも致命的な問題がある気がする。そもそも一冊のなかにあまりにも多くの情報が詰め込まれているのだ。

 よくいえば密度が濃い作品ということになるが、これはやはり詰め込み過ぎだろう。設定解説に紙幅をとられているものだから、肝心のキャラクターとそのドラマがなおざりになってしまっている。

 この作品の「萌え」を担当するのは犯罪すれすれの小学生ヒロイン、メイゼルときょぬー女子高生の倉本きずななんだけれど、ちょっと読者サービスの方向を間違えている気がする。長谷さんはおっぱいに気を取られすぎだと思います!

 ようするにまあ、設定に拘りぬく一方で、小説としてのまとまりが極度に悪い作品なのである。ここらへんの自己満足すれすれの作風は、奈須きのこ空の境界」とよく似ている。時折り読者を置き去りにして設定解説をつづけるあたり、そっくり。

 こう書いていくと長々と貶しているように見えるかもしれないが、それでいて、読んでいて退屈しない作品でもあるのだ。いや、ほんと、おもしろいですよ? 数々の難点にもかかわらず、作者が真剣にエンターテインメントを書こうとしていることが伝わってくる。

 惜しむらくは、それがまだ整理されきっていないこと。魔法理論、バトル、美少女キャラクター、ラブコメ、数千年の因果、報われない恋――とおいしい要素を山のように抱えながら、それぞれがあまりにもアンバランスなまま放り出されていることが、この作品の最大の欠点。

 いつか、これらのファクターが、ひとつの意思のもと統御され、完成した作品を作り出すことがあったら、そこに傑作が生まれるのではないか、と僕は期待している。とりあえず次の巻も買います、はい。打ち切りにならないといいな。