攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man [DVD]

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man [DVD]

僕は耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になろうと考えたんだ。

 発端はテレビカメラの前だった。生放送中のテレビ番組に、リボルバーをかまえた人物が乱入、背広姿のもうひとりの人物を脅迫したのだ。

 のちに被害者はセラノゲノミクス社長アーネスト・瀬良野氏と判明、しかし加害者の正体はなぞのまま残された。その人物は周囲のあらゆる人びとの電脳とカメラをリアルタイムでハッキングし、かれらの視覚に笑う男のマークを残して去っていったのである。

 かれの姿を視認できたのは電脳化していない浮浪者二名のみ。その正体はおろか、性別、国籍、推定年齢、そして単独犯なのか複数犯なのか、それすら判然としなかった。

 ただひとつ確認できることは「彼」が特A級の電脳ハッカーであること。やがて、その人物はネット上で「笑い男」とよばれ、伝説的な存在になっていった――。

 この「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man」は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」全編から、物語の中心をなす「笑い男事件」を抽出して再編集した新作である。

 「STAND ALONE COMPLEX」の熱烈なファンである僕はめずらしく期待してみたのだが、その期待は半分はかなえられた。

 まず本編の総集編としては実によくまとまった作品だと思う。全26話におよぶ物語を140分にまとめているので、さすがに無理がある個所も少なくないものの、全体的には省略と説明を巧みに用いて複雑な「笑い男事件」を要領よくまとめあげている。

 これにかんしては期待通り、いやむしろ期待以上の仕事だった。観ていて思わず物語にのめり込んでしまったくらい。

 一方、ストーリーの新しい解釈や新作カットなどはほとんどなかった。カットした部分の辻褄を合わせるために最低限付け加えられたという印象。

 本編との具体的な相違はこのページを参照あれ(当然ながらネタバレ全開なので、自己責任で読んでください)。まあ、熱心なファンだけ購入すればいいアイテムといったところでしょうか。

 しかし何度観てもこのシナリオは素晴らしい。80年代に発表されて以来、わずかな設定変更で今日までファンを魅了しつづけている「攻殻機動隊」というコンテンツの奥深さもそうだが、なによりシナリオレベルでの思索性の深さときたら。

 インターネットにアディクトしまくっている僕にとってこの作品のテーマはまったく他人事ではない。ウェブログを用いて毎日オリジナルな情報を発信しているようで、いつのまにか情報の渦に飲み込まれてたんなる模倣者に成り下がっていることもありえるのだから。

 草薙素子によれば、並列化の果てに「個」を取り戻すキーは「好奇心」なのだという。カウンタの数字だけに囚われ、今日も惰性で更新しつづけるブロガーにとっては耳に痛い言葉なのではないだろうか。いや、ほんと、惰性で更新するのやめようっと。――なんだこの結論。