サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

 読了。

 あるとき、ひとりの少女がたった3秒間だけ「時をかけ」た。その秘密を解き明かすため、彼女の友人たちは〈プロジェクト〉を開始する。

 その方法とは何度も同じ状況を繰り返す一方で、タイムトラベルSFを読み漁ること。わかりきった不毛さを楽しむ非常識なゲーム。

 しかし、タイムトラベルが繰り返し、その法則性が確認されるにしたがって、〈プロジェクト〉は予想外の方向へ突き進んでいく。

 「サマー/タイム/トラベラー」。とりあえずこの第1巻は、このタイトルから想像される内容そのままの物語だった。

 あまりにも気取った文章と、あまりにもセンチメンタルなセンス。衒学的な体裁。いなか町特有の閉塞感。「夏への扉」という名前の喫茶店。そして鶴田謙二のイラストレーション。それらが渾然一体となり、切ないジュヴナイル青春小説の世界をつくりあげている。

 たぶんこれは相当にひとを選ぶ小説だ。読者によっては、このスタイルを鼻持ちならない気取りと感じ、本を放り投げてしまうかもしれない。だけど僕は案外、この語り口がきらいじゃない。このあざといまでの切なさこそ、時間SFの王道じゃないか。

 ただ、この巻は完全に上下巻の上巻という印象で、これ1冊では決定的な評価は下せない。たぶん第2巻では、ばら撒かれた伏線が結実し、事件はスマートに収束していくに違いない。

 というわけで、これから第2巻を読むことにする。それでは、読み終わったらまたお会いしましょう。しーゆー。