- 作者: 新城カズマ,鶴田謙二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/06/16
- メディア: 文庫
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読了。
あるとき、ひとりの少女がたった3秒間だけ「時をかけ」た。その秘密を解き明かすため、彼女の友人たちは〈プロジェクト〉を開始する。
その方法とは何度も同じ状況を繰り返す一方で、タイムトラベルSFを読み漁ること。わかりきった不毛さを楽しむ非常識なゲーム。
しかし、タイムトラベルが繰り返し、その法則性が確認されるにしたがって、〈プロジェクト〉は予想外の方向へ突き進んでいく。
「サマー/タイム/トラベラー」。とりあえずこの第1巻は、このタイトルから想像される内容そのままの物語だった。
あまりにも気取った文章と、あまりにもセンチメンタルなセンス。衒学的な体裁。いなか町特有の閉塞感。「夏への扉」という名前の喫茶店。そして鶴田謙二のイラストレーション。それらが渾然一体となり、切ないジュヴナイル青春小説の世界をつくりあげている。
たぶんこれは相当にひとを選ぶ小説だ。読者によっては、このスタイルを鼻持ちならない気取りと感じ、本を放り投げてしまうかもしれない。だけど僕は案外、この語り口がきらいじゃない。このあざといまでの切なさこそ、時間SFの王道じゃないか。
ただ、この巻は完全に上下巻の上巻という印象で、これ1冊では決定的な評価は下せない。たぶん第2巻では、ばら撒かれた伏線が結実し、事件はスマートに収束していくに違いない。
というわけで、これから第2巻を読むことにする。それでは、読み終わったらまたお会いしましょう。しーゆー。