- 作者: 小川一水
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読了。
「復活の地」完結編。いまやすべてを失ったセイオは、来るべき第二の災厄にそなえ、あたらしい対応策を練る。一方、セイオに惹かれる自分を自覚したスミルは、内なる敵サイテンに対抗するべく、最後の賭けに出ようとしていた――。
というわけで全3巻読み終わりました。計1300ページもある大作ですが、それにふさわしいスケールとボリュームをそなえていると思います。
膨大なディテールから紡ぎだされる震災描写は圧巻。よくもまあこういう大量の資料が要りそうな小説を次つぎと出せるものです。
ただ文句なしの傑作と言い切るにはやはりためらいが残るのも事実。さいごのさいごまで妙に爽やかにすすんでいく展開にはどうしても違和感を禁じえませんでした。
この人の小説は、いくら悲惨な出来事を語っても全然悲惨そうに思えないんですね。一応、醜悪な人間心理が描写されてはいるんだけれど、どうにも薄い。
書くべきものを書いていないわけでもないので、ここまでくるともはや作家の個性としかいいようがないかも。ここらへん、いくらモラルを語ってもどことなく意地の悪い印象をのこす田中芳樹と好対照といえなくもない。
クライマックスはさすがに盛り上がるのですが、僕としては画竜点睛を欠く印象が残りました。いや、おもしろいんだけど、もっとおもしろくなるはずだと思うんだよね。
「第六大陸」や「導きの星」(の第1巻)を読んだときもそう感じたから、ただ僕と相性がよくない作家だというだけのことなのかもしれません。