野性時代 vol.22 (2005 9) (22)

野性時代 vol.22 (2005 9) (22)

 「野性時代」の最新号に有川浩桜庭一樹の短編が掲載されていると聞いたので読んでみる。よくみたら石田衣良の恋愛小説なども載っていたが、連載なので無視。このひといったい同時に何本連載抱えているんだろ。

 桜庭一樹「辻斬りのように」は、辻斬りのように次次と男遊びを繰り返す女性を鋭い筆致で綴った作品。とっても今風のお話なのだが、わざわざ物語の背景を昭和にして、「男遊び」の禁断性をかもし出すあたりが桜庭先生の奥ゆかしさなのかしら。

 文章はとっても巧く、流れるようにすらすら読める。すごいぜ、さすがライトノベル作家。ただ結末はちょっと安易かもしれないと思う。ある意味、この手の小説では定番ともいえる結びなのだが、どうも安直に使われすぎているのではないか。

 一方、有川浩「ロール・アウト!」は、自衛隊に飛行機を納入する会社の女性と、交渉相手の自衛官のラブストーリー。

 これはおもしろかった。SF要素ゼロの恋愛小説にして仕事小説。「自衛隊機のトイレ」というちょっとふつう目が行かないようなポイントに話を絞って、男女の生理感覚の違いからくる行き違いをコメディタッチで仕上げている。

 初期の川原泉あたりが書きそうなアイディアだなあ、と思ってしまったのは、鉄面皮の自衛官が出てくるからか。いやあ、有川さん、ほんとに自衛官好きみたいですね。

 組織のなかで青臭い理想を貫くことの困難さを誠実に描く作風も好ましいし、「空の中」あたりと比べると、恋愛小説としてもかなりこなれてきた感じ。これはいよいよ次の長編が楽しみだな。でもいつまでもラブコメスピリットを忘れないでください。