モップの精は深夜に現れる (ジョイ・ノベルス)

モップの精は深夜に現れる (ジョイ・ノベルス)

 読了。

 「天使はモップを持って」の続編。今回は4編が収録されている。各々の物語で主役を務めるのは、ちょっと仕事に疲れた社会人たち。うら若くキュートな掃除婦キリコは、かれらの抱える難事件を次つぎ解決しては去っていく。そう、まるで、モップの精のように。

 彼女が解決する問題はいわゆる「日常の謎」の範疇にある。なぜか突然少なくなったシュレッダーの紙ゴミ、オフィスに捨てられていた猫の毛、別人の名を騙って続けられるいやがらせ……。

 一見他愛ない出来事の影にはべつの意味が込められている。常人には見抜けないその秘密がキリコにだけは見て取れる。しかし、僕としてはむしろその部分はおまけで、疲れきった人々の描写のほうがおもしろかった。

 そうだよね、この社会で生き抜いていくって、ほんとに疲れるよね……。なんだかしみじみ共感してしまう。

 ただ、さいごの一編にだけ前作の主人公(というか探偵助手兼叙述役)の大介が登場するんだけど、こいつだけはどうもなさけなくてよろしくない。いや、特にどこがどう悪いわけじゃなくて、普通の人レベルってことなんだけど、相方がとびきりスペシャルな女の子だからなあ。

 ふつう、名探偵というやつは恋とは無縁と相場は決まっているから気付かないが、考えてみれば名探偵と結ばれたあいてにはそれなりの苦労がありそうである。ここらへんをクローズアップした小説って、ないものかな。あったら読んでみたいけれど。