奇蹟の表現 (電撃文庫)

奇蹟の表現 (電撃文庫)

 読了。

 お、お客さん。久しぶりだねえ。今日のお求めはどんな品で? え、ハードでアダルトなライトノベル? あいかわらず変わった注文してくれるね。

 そうだな、これなんかどうかな。古橋秀之の名作「ブライトライツ・ホーリーラインド」。架空の都市ケイオスヘキサを舞台に――なに、それは読んだって。そりゃ困ったな。なにしろ、この業界、そういった品はなかなかあるものじゃないからね。

 そうだ、ひとつ良いのがあったよ。祐樹充考「奇蹟の表現」。こいつはなかなかいけますよ。え、この表紙のどこが硬派なのかって? ああ、お客さん、見るところ間違えていますね。

 その女の子の後ろに、彼女の顔くらいある拳と腕が見えるでしょ。そうです、その機械の腕。その腕の持ち主が主人公です。こいつはある犯罪組織のトップだったんですけどね、暗殺者に妻と子供を殺されて――。

 というわけで、なかなかに掘り出し物のライトノベルである。といってもおもしろさの質は全然ライトノベル的じゃなくて、その手のサービス精神はヒロインの少女のキャラクターにしか残っていない。

 むしろフランシス・ポール・ウィルスンの「ホログラム街の女」とか、ああいう雰囲気の作品で、たぶん早川文庫JAで出していたらべつの読者層にも受け容れられたんじゃないかと。

 ちょっと宗教色が強いので好みは分かれるだろうけれど、まずはおもしろかった。もうちょっと描写がこなれていればなあ、とも思うけど。しかしこれ続編どうするんだろうね?