『不思議のひと触れ』。

 読了。

 スタージョンの短編集を読むのは3冊目になる。これだけ読むとこの稀有な作家の個性がどこにあったのか、少しはわかるようになってくる。スタージョンの魅力は、その卓抜な発想力と、「錬金術師の指」と称される文章力にある。

 まず発想。だれだって、「輝く断片」や「墓読み」、「マエストロを殺せ」を読めば、このひとの頭のなかはどうなっているのかと首を傾げずにいられないだろう。あたりまえの日常の一場面から語り始め、あっというまに異次元まで駆け抜ける光速の想像力。

 しかし、僕にとってより魅力的なのは、かれのあまりにも独特な「語り」だ。スタージョンはたしかに大奇想作家だが、「三の法則」や「タンディの物語」など、発想そのものはごく凡庸な作品だって少なくない。

 ところが、その魔術的な文章技巧を通すと、筋金入りの奇想はもちろん、どう考えても平凡なアイディアまでが黄金の輝きを放ってくる。

 この人はとにかく言葉の選びかたがでたらめに巧い。とことんひねくれたレトリックを駆使する作家なので、翻訳の苦労は相当のものだと思う。だが、これほど一行一行が創意工夫にあふれている作家というのは、ちょっとほかに思いつかない。

 そしてまた、そのどこまでもあたたかで優しい感性と、弱者に対する強い共感。たぶんそのおかげなのだろう、彼の小説は驚くほど現代的で、古さをかんじさせない。没後数十年を経て、スタージョンはいまも現代の作家でありつづけている。

(上記の文章はスタージョンシンクロ率400%の状態で書いているので、冷静な評価を必要とする方は☆くらい差し引いて考えてください。)