ヨイコノミライ! (2) (Seed!comics)

ヨイコノミライ! (2) (Seed!comics)

 きづきあきらヨイコノミライ!」がおもしろい。

 ある学校の漫研を舞台にした殺伐オタク漫画。それぞれコンプレックスを抱えた漫研部員たちが、ひとりの少女の入部によって狂っていく、そのプロセスを克明に綴った作品です。

 ある意味ではあくまでもコメディの体裁を崩さない「げんしけん」の対極に位置する作品ともいえるでしょう。個人的には「げんしけん」より好きかもしれません。

 この漫画のおもしろさは、各部員のコンプレックスの描写にあります。かれらはみな、学校社会になじめず、逃げこむようにして漫研に入部した人間ですが、それでもなにか機会があれば自分以外のメンバーを見下そうとします。

 「げんしけん」がファンタジーだったとすれば、それはまるで個性のちがうメンバーが、あくまでも対等に関係していたからでしょう。それに対して、「ヨイコノミライ!」では、漫研はあらゆる差別と侮蔑のたまり場にすぎません。

 各部員は外部社会における競争の敗者ではあります。しかし仮にかれらがこの世界のヒエラルキーの最下層に位置するとしても(そうは思わないけれど)、そのなかですら差別があり、階級闘争があるのです。

 絵が描けないから、彼女がいるから、口下手だから、知識が少ないから、リアルタイムでガンダムを見ているから、太っているから、痩せているから、そういう実にくだらないことで人間は他者を差別できる。優越感を持つ。劣等感を抱く。

 「ヨイコノミライ!」はその現実をこれでもかというほど詳細に描写しつづけます。この作品の展開は、ほとんどそれだけに終始しているといってもいい。

 たとえば自分の太った体に劣等感を抱く少女。彼女にとって世界は敵だらけです。始終、自分を非難する幻の声がきこえる。だれもが自分をあざ笑っているように思える。彼女は考えます。もし痩せていたら、すべてがもっとうまくいくのに。

「ABCDE―― 俺のランクはA 最低でもBより下ってことはねえだろう (幻想だそんなもん…) リアルな俺は 立つこともできねえ役立たず」。

 自分自身のイメージをヒエラルキーのなかでしか捉えることができなかった高橋の声がきこえる。

 僕はヒエラルキーになんか所属したくない。自分をランクづけするのも嫌だ。なに系にも、なに族にもなりたくない。だれも見下したくないし、だれにも見下されたくない。それって、叶わぬ望みなのかなあ。