いまではほとんど挿絵の仕事を引き受けなくなったようだが、僕たちの世代でファンタジーライトノベル系の小説を読んできた人間にとって、天野喜孝は非常に重要な存在だと思う。

 僕などは、「ファイナルファンタジー」→「ソード・ワールド」→「アルスラーン戦記」→「吸血鬼ハンター」→「グイン・サーガ」→「エルリック・サーガ」とおもいきり天野繋がりで小説を読んできた(FFは違うけど)。

 その前は「ロードス島戦記」とか「フォーチュン・クエスト」とか、ライトノベルの代表作を読んでいたんだけれど、小学生高学年になるとすこし背伸びをしたくなる。そこで、紀伊国屋で「アルスラーン戦記」を買ってきて読んだ。はまった。

 異国情緒ゆたかな描写、高いキャラクター性、壮大なスケール――小学生だった僕が求めるすべてがそこにはあった。あっというまに既刊7巻を読み上げると、「もっと同じような小説を読みたい」と思う。そこで道標になったのが天野喜孝の挿絵だった。

 天野繋がりで「グイン・サーガ」の外伝「ヴァラキアの少年」を読み、これにもはまった。あのころの天野喜孝の絵、栗本薫の文章、どちらも本当に美しかった。

 そしてまた菊地秀行を読み、そこから「魔界都市」を知ることになる。そのセックス&バイオレンスあふれる世界にいよいよ深くのめりこんだことはいうまでもない。またムアコックをも知り、前述のようにその暗い世界に衝撃を受けた。

 ふしぎなのはなぜか夢枕獏に進まなかったことだが、これは「たまたま」としかいいようがない。というわけで、僕はいまも「キマイラ」を読んでいない。しかし、天野喜孝はいまも僕の青春の象徴である。こういう人はほかにいるんじゃないでしょうか。