わたしたちの田村くん (電撃文庫)

わたしたちの田村くん (電撃文庫)

 読了。

 ギャルゲーテイストのラブコメディ。まあ、好きなひとは好きかと。さすがにこの歳になるとこの手のものはきつくなってくる。

 「わたしたちの田村くん」というからには主人公は田村くん。出来の良い兄と出来の良い弟にはさまれてすくすく育った凡人の次男。地味めの人生を送ってきた彼だったが、中学生活の終わりから高校生活のはじまりにかけて、ふたりの美少女と知り合うことなる。

 宇宙人を名乗るふしぎ少女の松澤さんと、ツンドラ色の目をした相馬さん。否応なく恋のスパイラルにまきこまれていく田村くんだったが――というのがお話。

 ヒロインになにかトラウマを設定して、それが解消するプロセスのなかで恋愛を綴っていくのはこの手のお話の常套手段なんだけれど、はたしてこれを「恋愛」とよべるものだろうか? 田村くんてば、ただかわいくて可哀想な子にうっかり感情移入しちゃっただけなんじゃないの?

 いくら読んでも田村くん個人の人格的魅力がみえてこないのだが、これはそういうものだと割り切って読むべきなのだろう。ツンデレとよくいうけれど、この小説ではツン→デレに行くプロセスにものすごい落差がある。その落差を楽しむのがこの作品の正しい楽しみ方なのだと思う。

 ふつうの小説の心理描写としては不自然きわまりないのだが、この場合はこれでいいのだ。落差が激しければ激しいほど萌えるのだから。でも、そこを違和感なくつなぐのが「芸」だとも思うんだけどね。