レプラコーンの涙―ソード・ワールド短編集 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 水野良,安田均,米田仁士
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 1990/01
- メディア: 文庫
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読了。
枕もとの本棚に転がっていたので(いや、僕が並べたんだけれど)なんとなく読み返してみた。
ソードワールドノベル初の短編集です。あわせて4本の短編が収録されているのですが、白眉は山本弘「ジェライラの鎧」。リファールの女騎士ジェライラと鎧職人ルバートのラブストーリーです。
作家には年月を経るほどに変わっていく人もいれば、長年同じ作風を貫く人もいますが、山本弘は完全に後者でしょう。細かい部分はともかく、全体的な印象は驚くほど変わっていない。
そもそもふつうのファンタジー職人ではまず日があたることがないだろう鎧職人に目をつけるあたり、いかにも「らしい」。鎧にかんする薀蓄もよく調べられていて、ちょっとおもしろかった。すっかり内容を忘れていたので、なんだか得した気分です。
ただ、心理描写の側面はさすがにいま読むと物足りないものがある。ほかの小説でもそうなんだけれど、山本さんの小説のキャラクターは素直なんだよね。
屈折していないわけじゃないけれど、その屈折のしかたまで素直。まとも。きれいに理屈が通っていて、心理の闇を感じさせない。
だから読んでいるほうとしては、「かんたんに反省するなよ。もっとひねくれろ」と思ってしまう。いやまあ思わない人もいるだろうけれど、僕は思うのです。
でもこれをはじめて読んだ中学生当時の僕はこれで満足したのだろうから、ジュヴナイルとしてはこれで正しいのかもしれません。正しいのでしょう。たぶん。