ショコラ DTS特別版 [DVD]

ショコラ DTS特別版 [DVD]

 衛星放送で放映されていたものを鑑賞。

 ジュリエット・ピノシュ演じる放浪のチョコレート職人(!)が、宗教的因習に凝り固まった村を変えていくまでを綴った料理映画。この手の作品ではアン・リー監督の「恋人たちの食卓」がとても好きなのだけれど、こちらも負けず劣らずの出来。

 船に乗って街にやってくる放浪者の役でジョニー・デップも出演しているが、かれの出番はごく少ない。その少ない出番でも強烈な個性をふりまいていくのはさすがではある。

 しかし、この物語の本当の主人公は、ジュリエット・ピノシュでもジョニー・デップでもなく、チョコレートたちなのだと思う。次つぎと登場するチョコのおいしそうなこと! ここではそれらは人生の甘いよろこびそのものの象徴である。

 そしてチョコレートを軸に繰り広げられる物語のテーマは明快だ。人生を楽しもうとするものと、その喜びを否定するもののあいだでくりひろげられる「聖戦」。

 ジュリエット・ピノシュは美食のよろこびで次第に村人たちの心をときほぐしていくが、その前に宗教的抑圧者である「伯爵」が立ちふさがる。かれはあらゆる手を使ってチョコレート店を潰そうとするのだが――。見終わったあとは優しい気持ちが残る。

 そう、たぶん、人生にはどうしてもチョコレートが必要なのだ。チョコレートや、恋や、音楽や、小説や、ダンスが。禁じることはたやすく、否定することはさらにたやすい。しかし、人生の楽しみは、なにかから心を閉ざすことではなく、広く受け容れるところにある。

 もちろん、映画もそのひとつ。映画を楽しむことを知るひとの人生は、それだけで少し豊かになるだろう。美と官能にみちた、楽しい作品だった。